誰よりも狙われた男

誰よりも狙われた男 “A Most Wanted Man”

監督:アントン・コービン

出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、グレゴリー・ドブリギン、
   レイチェル・マクアダムス、ロビン・ライト、ウィレム・デフォー、
   ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール、ホマユン・エルシャディ

評価:★★★★




 「裏切りのサーカス」(11年)に続くジョン・ル・カレのスパイ小説の映画化になる。…そんなわけで『誰よりも狙われた男』は至極地味な作りだ。ジェームズ・ボンドもイーサン・ハントもジェイソン・ボーンも出てこない、現実のスパイワールド。挿入されるアクションは僅か。占めるのは頭脳を駆使しての、静かなる戦いだ。必要とされるのは知恵。そして忍耐力。

 舞台はドイツのハンブルク。チェチェンから密入国した青年を追うテロ対策チームの勝負。できるところをどんどん省いた物語は、その筋を辿ることに専念しては楽しめないかもしれない。これはその細部を味わう映画だからだ。

第一に画面作りの美しさ。ベースに敷かれるブルーとグレイの中間が意識された色彩が目に残る。スパイが日常に溶け込むには、それこそ風景の中に沈み込んでいくような技が必要で、まるでハンブルクの景観がそれに共鳴しているかのよう。…と思ったら不意にイエローがすこーんと落とされるのが面白い。何度イエローは投下されただろうか。一度や二度ではない。そのアクセントのつけ方。

 役者もまた、その地味な景色の中に自分を沈めていく。レイチェル・マクアダムスのような派手な存在の者でさえも、ブルーとグレイの中に姿を消す。主人公フィリップ・シーモア・ホフマンは言うまでもない。

 このところデブである事実を忘れさせる役どころの多かったホフマンだけれど、今回はその太い体型が強調されている。常に肩で息をしているようで、それでいて物腰は落ち着いていて、その上身体の中では真っ赤な血が流れていることを常に意識させる。これがスパイ稼業に伴う苦痛と密着する。終幕に見せる咆哮とその後の静寂の落差など、ホフマンでなければ生み出せない。

 9.11後の世界ゆえ、イスラム系が取り上げられる。もはや以前と同じには生きられないイスラム系の哀しみが常に付きまとう。そしてそれが、ホフマンがちらつかせる、どこかで全てを諦めているような気配を撫でる。その微妙な触れ合いが切なさを煽る。孤独という言葉では説明できない何かが浮上する。





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