物語る私たち

物語る私たち “Stories We Tell”

監督・出演:サラ・ポーリー

評価:★★★★




 サラ・ポーリーは子どもの頃、兄姉たちに「パパに似ていない」とジョークを言われていたらしい。もちろん悪意はない。11歳のときに癌で母を亡くしたポーリーは、それから十数年後、ある事実を知ることになる。ポーリーはそれをドキュメンタリーにまとめ上げる。『物語る私たち』だ。

 舞台女優だった母の真の姿を追いかけるところから始まる。地味な父とは違い、明るく、気まぐれで、奔放な、太陽のような姿が見えてくる。母を語る父や兄、姉、友人たちが彼女を深く愛してきたことが手に取るように分かる。しかし、ある者が漏らす。「彼女は何かを隠していた」。

 母は亡くなっている。彼女は話せない。しかも彼女は口を噤むことを選んだ。それなのにそれを暴き出すのは趣味が悪い。そう思われても仕方のないところを切り抜けられたのは、その秘密に対して凛とした姿勢で向き合っているからだ。そしてその背骨にはポーリー一族が自分以外の人間へ見せる敬意とユーモアが通っている。

 とりわけ後者は重要だ。作中、悲劇と喜劇の関連性に絡んだ言葉が飛び出す。人の体温をしっかり感じさせる速度と距離感で題材を見つめ、30年以上の前の出来事を今という時代に映し出す。人はそれを粗っぽい言葉で「センス」と呼ぶ。

 事実をどれだけ公平に見つめようとしても、そこには語り手の意思が入り込む。それを承知しつつ、それでも語ることの意味が浮上するのがミソだ。後半部にはポーリーが誰かの背中を優しく撫でているような気配が漂う。何故父親が物語のナレーションを務めているのかも見えてくる。ポーリーの大胆不敵さと茶目っ気が合体し、それを実現させる勇気へと結実する。エンドクレジットで明かされるある事実も含め、真実と呼ばれるものの不確かさを笑い飛ばし、なおかつそれを母へのラヴレターに仕立て上げる。

 …と言うように、これはある家族の非常に私的な部分を収めた映画だ。それが生きていく上での普遍性を湛えたものに昇華されていくあたり、ポーリーという監督のユニークさを思う。全くの赤の他人の話のようには思えないのだ。「親密」を人に分け与える術を、ポーリーは知っている。





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