悪童日記

悪童日記 “A nagy füzet”

監督:ヤーノシュ・サース

出演:アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント、
   ピロシュカ・モルナール、ウルリク・トムセン、
   ウルリッヒ・マテス、ジョンジュヴェール・ボグナール

評価:★★★★




 もはや戦争は生き物だ。どれだけ辛辣な言葉を投げ掛けられても、悪辣な攻撃を受けても、決して怯まない。善悪の境界をも軽々と飛び越えて、歪んだ笑みを浮かべ続ける。ならば感情的になっても勝ち目はない。ハンガリー映画『悪童日記』は、それならばとその細胞の分析を試みる。

 第二次世界大戦末期のハンガリーに放り込まれるのは、まだ列車の中で走り回るような双子の兄弟だ。少年たちは母方の祖母の住む田舎へと、疎開を強いられる。もちろん優しい生活など待ってはいない。直接的な攻撃を受けることは稀でも、毎日がサヴァイヴァルだ。

 大抵の場合、この過酷な状況を健気に生き抜く幼く純情な魂の存在が、感動的に発見される。感傷とセットになることも多い。ところがこの映画は、これをはっきり拒否する。ふたつの魂は同情を狙うのではなく、自分たちの力で生き抜く力を獲得するため努力する。ここが見ものだ。

 殴られることなど日常茶飯事。だから双子は身体を鍛える。心が折れることがないよう、精神的に自分を追い込む。食糧難を切り抜けるため、空腹状態に慣らす。残酷さに心を馴染ませるため、「強請り」や「殺し」すら経験する。もちろんいざというときに備えて周辺の観察は怠らない。透明な魂に色がつき始める。

 鍵を握るのは祖母の存在だ。双子を「メス犬の子ども」と言い放つ醜悪な存在。双子が社会の、いや世界の悪意への抵抗は、祖母との戦いから始まるのだ。浜に打ち上げられたクジラを思わせる、非人間的な鬼婆の佇まいに見入る。

 ただし、祖母と双子の関係は、敵同士などという簡単な構図には落とし込まれない。戦争という特別な時期を同じ場所で生き抜く者同士にしか創り出すことのできない何かが迫り出してくる。祖母役の女優も双子役の少年たちも、眼差しに力がある。とりわけ少年ふたりは顔つきの変化が凄まじい。祖母以外の人物も実に鮮やかに処理される。

 戦争が終わった後を描く終幕の残酷な展開には、ある種の美が存在する。常に一緒に生きてきた、生き抜いてきた双子の関係もまた、戦争により揺さぶりを受ける。作中、ふたりはほとんど会話らしい会話をしない。それがラストシーンで、互いに言葉を投げ掛ける。その意味。クリスティアン・ベルガーが切り取る光と影は、その瞬間の切なさと希望を決して見逃さない。





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