アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方

アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方 “Arthur Newman”

監督:ダンテ・アリオラ

出演:コリン・ファース、エミリー・ブラント、アン・ヘッシュ、
   スターリング・ボーモン、クリステン・ラーマン、
   M・エメット・ウォルシュ、ルーカス・ヘッジス、
   ニコール・ラリベルテ、デヴィッド・アンドリュース

評価:★★




 人生に絶望した男が水死を偽装し、偽のIDを使って新しい人生を始める。女はそんな男に助けられ、その旅路に同行する。…そんなわけで『アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方』はコメディを思わせる設定なのだけど(40年代、50年代映画も連想させる)、そのトーンはひたすら深刻で暗い。主人公男女の言動は突飛でも、酷く生真面目な人間が作った映画だと察する。

 その生真面目さが災いしたのか、ふたりが淋しん坊ごっこをしているように見える。彼らは人生のリセットを試みる。全てを捨ててやり直す。その決意の中途半端さが常に透けて見える不幸。ふたりは旅の途中、留守の家庭に忍び込んでは他人のふりをして過ごすことを繰り返す。その犯罪を責める気はないものの、彼らがはしゃげばはしゃぐほど画面は辛気臭くなる。

 その言動の底に自らを憐れむ感傷が敷かれているからだ。「身勝手を正当化する」という分析を持ち込んで自己防衛を図り、感傷を決して手放そうとしない姿から伝わる叫びは、せいぜい「こんなに頑張っている。時に道を踏み外しもするけれど、何とか立ち直ってみせる。あぁ、俺は、私はなんて偉いのだろう」程度のものだ。感傷はいつしか甘えと結びつき、自覚を言い訳に許しを請う。

 男女をコリン・ファースとエミリー・ブラントが演じる。どちらも役柄に似つかわしくない。彼らが具えた知性が役柄に溶け込まない。ファースもブラントもむしろ、厳しい状況下でも冷静に物事を見つめるタイプ。湿っぽさと相性が悪く、ドライな感情処理の中で生きることを得意とする。無理に心を沈ませる必要はない。

 男に置き去りにされた者たちの心象の方が、まだ面白い。低温の関係を続けていた恋人とほとんど口を利かなかった思春期の息子だ。とりわけ息子はフランソワ・オゾン監督の「まぼろし」(00年)のヒロインと同じ状況に置かれたまま、父との関係を見つめ直す。その反抗的な態度の裏側に傷ついた心が隠れているというのは定石通りでも、少なくとも感傷は拒絶している。「死んだ方が愛しやすい」なんて呟きながら。

 終わってみれば、これは単純な自分探しの物語だ。面倒臭く、じめじめしていて、利己的で、でも当人たちだけは満足感を感じている。まあ、自分探しなんてものは、得てしてこういう形にハマるものだ。己の胸の内だけで完結させれば良い問題を大袈裟に騒ぎ立てる。活気からかけ離れたそれを見せるだけの映画は辛い。





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