HUNGER ハンガー

HUNGER ハンガー “Hunger”

監督:スティーヴ・マックイーン

出演:マイケル・ファスベンダー、リアム・カニンガム、リアム・マクレーン、
   スチュアート・グレアム、レイン・メーガウ

評価:★★★




 『HUNGER ハンガー』の主人公のボビー・サンズは、北アイルランドを語る上で避けては通れないIRAのメンバーだ。そして彼こそが、1981年に起こったハンガー・ストライキを先導した男だ。そのとき26歳。この若さで同志たちを結託させハンストを実現させるとは、一体全体いかなる男なのか、興味を惹かれずにはいられない。

 けれど、スティーヴ・マックイーン監督の関心はサンズの内面を深く掘り下げるところにも、IRA問題の核心を突くところにもない。IRAの活動を裁くことはしない。白黒つけることもない。マックイーンは過激な行動を凝視することで人間の尊厳について問いかける。

 ハンストの前には毛布と糞尿を用いた抗議が4年に渡って繰り広げられる。囚人服を着ることを拒否し、全裸にまとうのは決して洗濯がなされない毛布。自らの身体から排出された糞を壁一面にこすりつけ、尿は床に垂れ流す。蛆が沸き、ハエが飛び交う空間。見た目や匂いはもちろん不快、やってのける本人たちも相当苦しいだろう。

 けれど、ここが面白いのだけれど、どこか美しさを感じさせるのだ。それはその言動の奥で彼らが求めてる尊厳に穢れが見えないからだ。彼らは政治犯としての身分を剥奪され、日常的に非人間的な仕打ちを受ける。その最たる例が暴力で、機動隊まで動員されて行われるそれに、本当にこれがあの英国で行われていたことなのかと唖然とする。虫の息で、それでも尊厳は抵抗を続ける。

 マックイーンはそれを見せるために映像の力を信じる。静かな画面を好み、序盤と終盤からほとんどセリフを排除する作法。汚物の茶色と柔らかな光の透明を対比させ、そこに影を作る色合い。装飾を避けてじっくり対象の肉体と内面を追いかける長回し。

 ひとりの看守の手の怪我の理由が明かされる件やサンズと神父による20分にも及ぶ一対一の対話の件など、そのスマートな見せ方や腰の落ち着いた語り口に唸る。人間の強さや弱さが人間らしさと結びつく。直接的な説明を避けながら、その芯を露にする。

 派手な演技に走ってもおかしくない役柄を充てられた俳優たちは、むしろ物語の静けさに貢献する。喚くことよりも沈黙することで尊厳を語る。マックイーンの映像術があればこそ実現したものだろう。マイケル・ファスベンダーとリアム・カニンガムによる長い対話など、何かが降りてきているような神々しさがあった。





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