ジャージー・ボーイズ

ジャージー・ボーイズ “Jersey Boys”

監督:クリント・イーストウッド

出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、
   ヴィンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン、マイク・ドイル、
   レネー・マリーノ、エリカ・ピッチニーニ、キャスリン・ナルドゥッチ

評価:★★★★




 楽曲が有名だからもちろんザ・フォー・シーズンズのことは知っている。ただ、思い入れはない。リード・ヴォーカルを務めるフランキー・ヴァリの声質が好みではないからだ。現役バンドならMaroon 5のアダム・レヴィーンが近い声質だろうか。甘く爽やかと評価される歌声の甲高さが脳天に突き刺さるようで…。

 それにも関わらず胸躍るのは、これはもう、クリント・イーストウッド監督の趣味の良さが隅々から感じられるからだ。『ジャージー・ボーイズ』はそのザ・フォー・シーズンズの栄光と没落を描く。イタリア系移民の町で育った青年たちがバンドを組み、苦労を積み重ねがららもブレイク、しかしどんなに踏ん張っも頂点からは落ちることしかできなくて…というこの手の物語の典型をはみ出すことはせずに、しかしそれでも興味を惹きつけてやまない。鮮やかだ。

 鮮やかと言っても、華やかさを追求しているわけではない。むしろ華美な装飾は避けられる。これが良い。画面に原色はほとんど登場しない。灰色や茶色をベースにした色合いでまとめられ、時に意識的に作られた影が効果的な主張を見せる。照明の力も大きく、何が起こっているわけでもないどの場面でも、本物の気品が感じられる。大袈裟に言うなら、たとえセリフの一切を排除して、この画を並べただけでも楽しめるほどに。

 原作のブロードウェイ作品のようにミュージカルではない。当然だ。この落ち着いた世界の中で登場人物が突然歌い踊り出す演出がハマるはずがない。かと言って楽曲がぞんざいに扱われるわけでは、もちろんない。楽曲は物語の中の流れるべきところで、パフォーマンスと共にじっくり流れる。バンドの結成、ブレイクのきっかけ、レコーディング、ライヴ、再会…人生の傍らに、いつも楽曲はあった、という解釈だ。

 ミュージシャン映画の主人公の多くはアルコールとドラッグにより堕ちていくのが常なのに、それが避けられるが有難い。代わりに金の問題がクローズアップされるし、プライドの問題も迫り出す。哀しい死も訪れる。けれどヴァリは決して醜態を晒さない。一瞬の大声はあっても理性は失わず、絶望を理由に泣き喚くこともない。佇まいの中に沈んだ心象を封じ込める。そしてまた歩き出す。

 堕ちていくところが描かれても、物語までも悲劇に溺れることはない。話の背骨に、それでも人を見捨てない強さと音楽への愛情が、真っ直ぐ通っているからだ。これはそのままヴァリの生き方にも重なっていく。イーストウッドが最も大切にしたところだろう。それを前面に掲げないのが、どこまでも格好良い。

 敢えて不満を言うなら、ブロードウェイ版に敬意を表したと思われるフィナーレの件か。その前の街灯の下、臙脂色の衣装に身を包んだ四人が練習する場面で終わっても良かった。まあ、目くじらを立てるようなことでもない。





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