リスボンに誘われて

リスボンに誘われて “Night Train to Lisbon”

監督:ビレ・アウグスト

出演:ジェレミー・アイアンズ、ジャック・ヒューストン、メラニー・ロラン、
   マルティナ・ゲデック、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ、
   レナ・オリン、クリストファー・リー、
   シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ

評価:★★




 スイスのベルンで教鞭を執る主人公は、自殺しようとしていたところを救った若い女が残した一冊の本に魅せられる。そしてそこに挟まっていたポルトガル、リスボン行きのチケットを使って、衝動的に夜行列車に乗り込む。授業中の生徒を放り出し、仕事を投げ出し、校長からの電話に無視を決め込む。この冒頭から、あぁ、そう言えばジェレミー・アイアンズは破滅型の男が似合う俳優だったと思い出す。

 もしかしたらアイアンズの、かつての十八番的演技が見られるのではないか。『リスボンに誘われて』はその淡い期待をあっさり裏切る。本に綴られた言葉の魔法にかけられた彼は、著者の人生を探り始める。何とアイアンズは、ほとんど狂言回しの役割しか果たさないのだ。アイアンズの役割は、好きになった作家の人生を覗き見ることのみ。衝動の先にあるものがこれでは、破滅型の男なんかではなく、とんだうっかり男だ。行く先々で人々の心癒す、なんて持ち上げてくれるな。

 調査中に散見されるご都合主義に呆れる。作家の周辺人物の大半はリスボンに住んでいるという安易さもさることながら、いとも容易く目標に到達するので、今度はラッキー男へと変身だ。何しろ転んだことで壊れたメガネを新しくするために訪れた医師の叔父が作家の関係者だった…なんて偶然を平然と語るのだ。

 そうして集められたピースが一枚の絵を作る。これがメロドラマ以外の何物でもないのにびっくり。70年代独裁政権下、作家は反体制派の人間だった。けれど、その詳細はほとんど語られない。メインとなるのはその活動中に生まれた恋模様だ。革命も大切だ。けれど、より大切なのは恋する気持ちだ。…ってことらしい。作家の本業が医師であることも、愛しい女の特技がずば抜けた暗記力にあることも、ストーリーに関与しない。加えてそこに被さる、著書に記された臭い言葉の数々。いや、臭いというより青いと言った方が良いか。孤独やら恐怖やら時間をやたら崇め奉る。

 メロドラマなら別に、それでも良いのだ。けれど、アイアンズがその全貌を探るという構成を採るのであれば、それに理由を用意するのが当たり前だろう。アイアンズよ、「彼らは全力で生きていた」なんて納得している場合ではない。美化なんてしなくてよろしい。浮上する真実は、大して信念のない者による陶酔の一場面だ。

 ただ、リスボンの景色は味わい深い。坂の多い街のベースとなるのは優しい茶色で、そこに柔らかな太陽の陽射しが加わり、眺めているだけで気持ちが良いったらない。空や海との青との溶け合い方も滑らかだし、観光地巡りにしない節度も有難い。街並みの方がよっぽど時間がもたらす意味を雄弁に語る。





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