スパイラル 危険な関係

スパイラル 危険な関係 “The Details”

監督:ヤコブ・アーロン・エステス

出演:トビー・マグワイア、エリザベス・バンクス、ローラ・リニー、
   ケリー・ワシントン、レイ・リオッタ、デニス・ヘイスバート

評価:★★★




 何ともまあ、恐ろしい話だ。コーエン兄弟やサム・ライミが嬉々として手掛けそうな不条理劇。妻との関係が倦怠期に突入している医師に次々降りかかる不幸。アリ地獄の巣にハマっていくのに例えることも可能だけれど、物語を考えれば、芝生を狙って荒らすアライグマの穴に堕ちていくと見るのが妥当だろう。穴がこれがまた、なかなかどす黒いのだ。アライグマも侮れない。

 『スパイラル 危険な関係』の主人公は悪人ではない。基本的に善人だ。けれど、どこで間違えたのか、人の道に外れた行動を繰り返してしまう。昔馴染みの女性との浮気。その夫との衝突。エキセントリックな隣人との妊娠騒動。アライグマ退治は明後日の方向にしか進まない。動けば動くほど穴の闇は深くなっていく。

 これをトビー・マグワイアが愉快に、そして時にスパイシーに魅せる。マグワイアという俳優は主人公同様にフツーだ。所謂スターオーラでキラキラしていることもなければ、我が強く出るタイプでもない。常に一歩引いたところで、冷静に事を見つめる平凡で目立たないタイプ。でもそのフツーをフツーとして見せるのは難しいわけで、それを難なくやってのけるマグワイアはやっぱりたいした俳優なのだ。

 主人公は中盤、突然善行に走る。腎臓に問題を抱える友人のために、一肌も二肌も脱ぐ。それこそ身体を張っての善行。でもそれを表面通りのそれとして受け取ることはできない。どこかで救われたいという主人公の思いが、無意識の打算となって表れたと見るべきだ。そしてそれが、また思いがけない不幸を呼び寄せる。誤解を恐れずに言えば、毒の効いた面白い展開だ。やや先が読めるが…。

 「無理が通れば、道理が引っ込む」。作中出てくるセリフだ。映画はこれを映像にしたようなもので、現代社会の反映と見ることができる。この世はいつだって上手く行かなくて、哀しくて、悲劇的で、不条理で、もう笑うしかない。終幕全ての顛末を打ち明けられた妻役のエリザベス・バンクスが、あまりの事実に呆気にとられ、笑い出してしまう場面がある。これは極めて正しい反応だろう。

 ただ、この笑いを引き起こしたマグワイアの告白は、映画上、必要なものだったのかどうか。突如物語を一面的に見せてしまう窮屈な告白だ。アライグマの穴の中にぼんやり光を与えてしまう、愚行だと思う。闇は闇のままでこそ、味わい深いというのに。

 面倒な隣人を演じるローラ・リニーが可笑しいの何の。顔に張りついた笑顔が「トゥルーマン・ショー」(98年)を思い出させる。突飛な言動でマグワイアを翻弄、いつでもどこでも自分の世界に巻き込んでしまう強引さを楽しく見せる。退場場面もなかなかアッパレ。マグワイアだけじゃなく、他のクセモノ俳優たちとももっと絡んで欲しかった。何ならアライグマと対決させても良い。リニーならば、一流の喜劇を作り出してくれるはずだ。





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