美しい絵の崩壊

美しい絵の崩壊 “Adore”

監督:アンヌ・フォンテーヌ

出演:ロビン・ライト、ナオミ・ワッツ、ゼイヴィア・サミュエル、
   ジェームズ・フレッシュヴィル、ソフィー・ロウ、
   ジェシカ・トヴェイ、ベン・メンデルソーン

評価:★★★




 バカバカしい話だと言われても仕方ないだろう。子どもの頃から親友同士の中年女ふたりが、互いの息子と恋に落ちるというのだ。昼メロも真っ青のギャグ設定。アンヌ・フォンテーヌ監督はこれを思い切り大真面目に撮る。文芸作品として。エロドラマと割り切って過激な表現に走れば良いのに…という声がどこからともなく聞こえてくる。

 悪趣味な関係はすぐさま全員の知るところとなる。このときの四人の態度が理解し難い。それぞれの関係が崩れないのだ。母親同士も、息子同士も、母息子同士も平穏そのもの。四人で食事して、遊んで、あろうことか自分の母・息子の目の前でいちゃこく。あぶれた人はいないんだから良いじゃないの、みたいな。そんなのあり?

 『美しい絵の崩壊』はしかし、そこを我慢すれば案外感じ入るところも少なくない映画だ。確かに愚かしく信じ難い展開・構図だけれど、次第に妖気が立ち込めてくるではないか。合図は息子のひとりが仕事で家を空けるようになってから。関係が始まったときから分かっていたことだけれど、若い男が年上の女を捨てるときが来たのだ。魔法が解けたと言うべきか、目が覚めたと言うべきか、このときの母親の捨てられ方に奇妙なカタルシスがある。

 母親ふたりは静かに取り乱すものの、フォンテーヌは冷静な姿勢を保つ。関係が崩れて終わりとしない視点をキープする。そうして映し出されるラストショット。いつの間にか四人は、四人にしか分かり合えない歪な空間に閉じ込められていることが示唆される。じわじわと感じていた気配が、実はホラーのそれではないかと気がつく。

 美しい撮影が効いている。性に溺れる前半はポストカード的美しさに留まっていたものが、段々美し過ぎるがゆえに僅かな濁りが際立つそれに切り替わっていく。舞台はオーストラリアの東海岸。フォンテーヌはその入江で揺れるボードをメタファーに、想像力を膨らませる。

 ナオミ・ワッツとロビン・ライトだから成立した話だ。美しい老け方を知っているふたりが、老いる過程に潜む美醜を優雅に恐れずに魅せる。息子役の俳優ふたりからは艶というものがほとんど感じられないものの、女優ふたりがそれをカヴァーする。

 最後に。これは父と娘に置き換えることは不可能な話だ。関係が始まった時点で、殺人事件が始まって終わりだろう。





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