MAMA

MAMA “Mama”

監督:アンディ・ムスキエティ

出演:ジェシカ・チャステイン、ニコライ・コスター=ワルドー、
    メーガン・シャルパンティエ、イザベル・ネリッセ、
   ダニエル・カッシュ、ハヴィエル・ボテット、ジェーン・モファット、
   デヴィッド・フォックス、ドミニク・クゾクリア

評価:★★★




 子どもが怪異に気に入られるホラー映画は珍しくない。お年寄りがとり憑かれるパターンは全然見かけないというのに、子どもは人間ではない何かの大好物なのだ。『MAMA』でも狙われるのは幼い命で、新味の感じられない設定にがっかりするものの、それでも気になるのは製作総指揮にギレルモ・デル・トロの名前があるからだ。ホラーに必要不可欠な「美」を感じさせてくれるかもしれない。

 期待は裏切られない。色彩感覚に敏感な画面の美しさはそれだけで見入るものがあるし、邸の設計を利用した構図での遊びも面白い。壁にできた不可思議な模様も異様なだけではない。誰でも一度は経験があるだろう、ロールシャッハ・テストを思わせるデザインで、そこから何が出てくるのか不安を煽る。舞台となる邸自体が、研究のために用意されたそれであることも、実験色の強いムード作りに貢献しているかもしれない。画面を飛ぶ蛾も、ある種の美に通じる存在だ。

 物語は怪異が少女姉妹を自分の世界に引き入れようとするお馴染みのものだけれど、それに奥行きが出ているのは「母性」への着目が丁寧になされているからだろう。姉妹は5年間怪異に育てられていて、ほとんど「狼に育てられた少女」状態。けれど、叔父とその恋人と暮らす内に少しずつ人間性を取り戻していく。姉妹にとっては怪異は母親であり、叔父の恋人もまた母親だ。ふたりの対照性が効いている。

 怪異と叔父の恋人の愛情のせめぎ合いが見せ場になっていくのが巧い。恐ろしい存在である怪異は愛情ゆえの恐怖を見せるだけに過ぎない。叔父の恋人は子どもに興味がなかったはずなのに次第に母親としての目覚めを覚える。世間が母性と呼ぶものに寄り添い、それが思いがけない展開を生み出す。

 具体的には怪異と叔父の恋人のふたりから愛情を受ける子どもたちの変化に見える。最初は怪異に寄っていたのに、次第に叔父の恋人の愛情もまた本物だと感じ入り、人間の心を取り戻していくのだ。叔父の恋人が怯える少女を抱きしめ、息を吹きかけることでふたつの魂が溶け合う場面は、作中最も美しく感動的なそれのひとつだ。

 それにしてもジェシカ・チャステインのカメレオンぶりには驚く。これまでとは全くイメージの違うパンクなスタイルで登場。黒のショートボブ。青く塗ったアイメイク。ギターを鳴らすロックなファッション。どの場面も初めて目撃するチャステインだ。もちろん母性を目覚めさせてからの演技が真骨頂。それに比べると叔父役のニコライ・コスター=ワルドーは損だ。少女たちと血縁関係にある役柄なのに、都合の良い扱われ方しかなされない。二役ももらいながら、お気の毒。

 難を言うと、怪異と叔父の恋人が母性を通じて共鳴し合う場面があると、なお良かっただろう。母性の対立ばかりではやや単調になる。思いがけないシンパシーが互いに寄せられることで生まれるものもまた、真実として浮上させられたなら、より多角的な物語になった気がする。





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