ハミングバード

ハミングバード “Hummingbird”

監督:スティーヴン・ナイト

出演:ジェイソン・ステイサム、アガタ・ブゼク、ヴィッキー・マクルア、
   ベネディクト・ウォン、ジャー・ライアン、ヴィクトリア・ビューイック

評価:★★




 いきなり突きつけられるのは…ハゲは髪を伸ばしてはいけないという現実だ。いや、伸ばすのは自由なんだけど、量が少ないのに長髪になると、薄さが際立って全体の佇まいがかえって貧乏臭くなるというか何というか。ジェイソン・ステイサムは『ハミングバード』の冒頭でホームレスという設定ゆえ、髪を伸ばし放題。髪を切る金も余裕もないということなのだろう。ライヴァルは落ち武者だ。ステイサム、B級専門とは言え、アクションの帝王である君がそれで良いのか。伸ばした髪が自前だったら、ちょっと偉いけど。

 …というからかいが恥ずかしくなる映画だから驚く。髪を早速切り落として(いきなり坊主になってハゲを見せつける潔さ。もちろん貧乏臭さは一気に消える)、高級スーツを装着。いつもの調子で悪漢とガンガン戦うのかと思いきや、どっこい、どうやらこれは現代社会が抱える闇を伝えることこそを第一目的に置いた真面目な内容だと分かる。

 ステイサムが演じるのはアフガニスタン帰りの元特殊部隊の軍曹で、彼が抱える心の闇が大々的に取り上げられる。PTSD、心的外傷後ストレス障害というヤツだ。それに加えて貧困やアルコール、犯罪組織、性犯罪といったロンドンの裏社会の問題が次々浮上する。復讐という概念への考察も見られる。ステイサムの役柄をブラッド・ピットやブラッドリー・クーパーあたりが演じても違和感はないのではないか。もちろん作品の外観からB級色は薄れるだろうけれど。

 ステイサムもたまには「演技」をしてみたくなったのかもしれない。時に涙を浮かべて男の絶望と悔恨を見せる。妻や娘がいるという設定も、彼にしたら珍しいのではないか。修道女にちょっかいを出すも、基本的に女に誠実というのが、らしいくらいではないか。

 ステイサムの役者業への意気込みは分かるものの、やはり似つかわしくはない。売りであるアクロバティックなアクションは影を潜める。アクション自体はあっても、それは現実感のある暴力であり、無邪気にそれを楽しませようという気配はない。ここでは暴力により感じる痛みこそが主役なのだ。そしてそれがB級アクションスター、ステイサムの魅力を半減させる。

 修道女とのささやかなロマンスも用意される。これが物語の中で異様な浮き方だ。メルヘンめいていると言い換えても良い。過剰に世間に愛されている「レオン」(94年)のメルヘン色に通じるかもしれない。ふたりが遂に身体を重ねる描写はなく、仄めかしで済まされる。それが床に散らばった衣服や鞄、靴を映し出して悟らせるというのが、いつの時代のメロドラマだよ!と突っ込みたくなる恥ずかしさだ。いつも通りのステイサム映画ならば、これほどまでに浮き上がらなかったかもしれない。志は立派でも、どうも向くべき方向を間違えている気がする。





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