グランド・ブダペスト・ホテル

グランド・ブダペスト・ホテル “The Grand Budapest Hotel”

監督:ウェス・アンダーソン

出演:レイフ・ファインズ、トニー・レヴォロリ、F・マーレイ・エイブラハム、
   エドワード・ノートン、マチュー・アマルリック、シアーシャ・ローナン、
   エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、レア・セドゥー、
   ジェフ・ゴールドブラム、ジェイソン・シュワルツマン、ジュード・ロウ、
   ティルダ・スウィントン、ハーヴェイ・カイテル、トム・ウィルキンソン、
   ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン

評価:★★★★




 タイトルになっている『グランド・ブダペスト・ホテル』が期待通りに美しい。1932年、ヨーロッパにある仮想の国ズブロフカ共和国にあるそのホテルをパッと見て思い出したのは「picturesque」という形容詞だ。作中にも出てくる。「絵画のように美しい」といった意味合いで、まさにどこを切り取ってもアンダーソンの美意識が炸裂する。ペールピンクの外観。真っ赤な絨毯やエレヴェーター。紫をベースにしたホテル従業員たちのユニフォーム。鍵がクロスされたホテルの紋章。美術や衣装だけでも凝っているのに、そこにあの独特の左右対称の構図が盛り込まれる。嫌でも目に焼きつく。

 ロバート・アルトマンならば、この舞台で思い切り遊ぶところだけれど、意外やアンダーソンは冒険好きの人だ。積極的にホテルから飛び出して物語を語る。思えばこれまでの作品でも、一カ所に留まった作品はほとんどない。アドヴェンチャー映画と言い換えても良いほどに、運動量が多いのがアンダーソンなのだ。

 そんなわけでホテルのコンシェルジュ、ムッシュ・グスタフ・Hは新米ロビーボーイのゼロと共にヨーロッパのあちらこちらを駆け巡る。ホテルの上客である老婆が殺され、その殺人容疑がかかったからだ。「少年と林檎」なる絵画にまつわる謎が散りばめられ、グスタヴが真相を追い求める。推理仕立ての物語として引き寄せながら、しかし、見所はそれを彩る細部と言えるだろう。

 列車での大陸横断。刑務所生活。脱獄アクション。殺し屋とのキャット・アンド・マウスの攻防。ホテルに拘らなくても、アンダーソンは容易く自らの世界を作り上げる。中でも秘密結社が出てくる件には身を乗り出す。窮地に陥ったグスタフがSOSを送り、それを伝え聞いた仲間たちが最小限にして最も効率的な策を考え、実行し、成功に導く場面だ。ゲーム感覚を感じさせながら、けれど安っぽくはない。充実したカメラワークと含むところの多い短いセリフが燃料だ。

 役者は細部まで豪華だ。新しい顔が出てくる度に拍手したくなる衝動に駆られる。ほとんど無表情な演技を指示されているようなのに、オーヴァーリアクションよりもよっぽどデキる役者に見えるのが面白い。演出力と演技力のコンビネーションの妙とでも言えば良いか。もちろんMVPはコンシェルジュとロビーボーイに扮したレイフ・ファインズとトニー・レヴォロリだ。単独でも充実した佇まいの彼らだけれど、同じ画面に入るとその魅力が何倍にも膨れ上がる。エモーショナルなやりとりを変に強調しないのが良い。

 お菓子のような可愛さと甘さを湛えながら、それでもやはりこれは大人の映画だ。戦争の影、時代の波が忘れられていないのが、その証拠だ。意外や苦味のある終幕に、栄枯盛衰、人生の儚さを見る気分だ。





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