インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 “Inside Llewyn Davis”

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

出演:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジョン・グッドマン、
   ギャレット・ヘドランド、F・マーレイ・エイブラハム、
   ジャスティン・ティンバーレイク、スターク・サンズ、アダム・ドライヴァー

評価:★★★★




 呆れるほどフットワークの軽いコーエン兄弟が手掛ける『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』は、ボブ・ディラン登場前夜、1961年のニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジのフォークミュージック・シーンが舞台だ。主人公ルーウィン・デイヴィスが冒頭で歌い上げる「Hang Me, Oh Hang Me」の「俺の首を吊るしてくれ」のフレーズにギョッとする。

 そう、これはフォークが盛り上がる華やかなる瞬間を封じ込めた映画ではない。敢えて言うなら、メランコリックな空気感を味わう映画だ。デイヴィスの佇まいからして憂鬱だ。オスカー・アイザックがハンサムな容姿を髭もじゃで隠し、体型もオヤッさん風にチェンジ。左手にギター、右手に猫を抱えて町をとぼとぼと歩く姿よ…。

 けれどそこはコーエン兄弟、それだけで終わるはずがない。ここに生きる哀しみとおかしみを振りかけて、それでも何か尊いものがそこにあるように撮り上げるのだ。この世は辛いことだらけだ。頑張っても報われるとは限らない。けれど、その無様に見えなくもない人生のどこかで、何かが微かに光っている。

 それは結局、デイヴィスのみっともない生き方に向けた、ある種に肯定の視線が存在するからなのだろう。金はない。家もない。家族仲も良くない。当然女もいない。なのに遊びで寝た女友達を妊娠させる。毎日必ずやることと言ったら、寝ぐら探しだ。八つ当たりで他人と衝突することもしょっちゅうある。デイヴィスはこの中でもがく。でもそれでいいじゃないか。

 フォークへの執着は愛と言えば聞こえが良いけれど、彼の場合、実はそんなに格好良いものではない。自分の好きなものを信じてやり続けているというよりも、そういう生き方しかできないからそうしているだけで、デイヴィスは単純にダメな男なのだ。でもだからこそ見える世界がある。デイヴィスの眼差しを通じて、コーエン兄弟はそこのところを見逃さない。

 アイザックが自前のパフォーマンスで魅せる楽曲のいちいちが憂鬱で、でもじわじわ沁みる。当時のフォークを良く研究され、ムード作りは最高だ。アイザック以外の、ジャスティン・ティンバーレイクらパフォーマーも充実。アイザック、ティンバーレイク、アダム・ドライヴァーによる「Please Please Mr. Kennedy」あたりは捻りも効いている。ドライヴァーの意味不明の合いの手が最高。

 時代の空気も見事だ。ブリュノ・デルボネルが切り取る画の柔らかさが心地良い。現実と幻想の境界にいるかのような陰影が感じられる。歌声との相性も良い。忘れてはいけないのは、デイヴィスと一週間を共にする猫の存在で、こやつが画面を横切る度に、時代の風が吹いている感じだ。映像のアクセントとしても素晴らしい存在感だろう。





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