ブルージャスミン

ブルージャスミン “Blue Jasmine”

監督:ウッディ・アレン

出演:ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、ルイス・C・K、
   ボビー・カナヴェイル、アンドリュー・ダイス・グレイ、
   サリー・ホーキンス、ピーター・サースガード、
   マイケル・スタルバーグ、アルデン・エーデンライク

評価:★★★★




 真っ先に連想するのは「欲望という名の電車」(51年)だろうか。「サンセット大通り」(50年)の気配も香る。意外なのは『ブルージャスミン』を手掛けたのがウッディ・アレンということで、最近のコメディの調子を抑え気味にして、夫の逮捕をきっかけにしたヒロインの転落のドラマを酷く冷静に、いやほとんど冷徹に見つめている。とりわけ「欲望という名の電車」は意識したというより、オマージュを捧げたと言って良いのではないか。

 ヒロインのジャスミンはいけ好かない女だ。追われるようにニューヨークからサンフランシスコへ向かう飛行機で隣に座ったバアサンに延々身の上話を聞かせるオープニングから、共感の大半を拒否する。ニューヨーク社交界の煌びやかで、そして空虚なる世界でしか息のできない女の哀れ。けれどそれは彼女自身が望んで手に入れたもので、同じものを望まない者を蔑んでいる。

 ケイト・ブランシェットはこのバカ女の肉体に血を通わせた。同情を寄せない。賢くも見せない。ユーモアのセンスも撥ねつける。けれどどこかで我々一般庶民と繋がっている「人間」の部分を見逃さず、それが彼女の最後の真実とばかりに躍動させる。彼女を好きにはなれなくとも、興味をかき立てられる存在に仕立て上げる。こういう風にしか生きられないイキモノとして。ただし、怪物には見せない。

 ジャスミンの普段の佇まいの中にちらつく狂気にゾッとする。ブランド服に身を包み栄光に縋りついても、些細なことで脆く崩れ落ちてしまいそうな匂い。酒と薬が手放せない云々ではなく、心のバランスの危うさが全身からにじみ出る。過去に囚われた独り言場面の怪奇要素もさることながら、ふとした隙に出てくる本音が怖い。「誰と寝ればウォッカが飲めるのよ」。

 これは姉妹の物語でもあって、サリー・ホーキンス演じる血の繋がりのない妹が体現する庶民の幸せも考察される。彼女はバカ男から離れられない。手痛い目にも遭う。けれど彼女は少なくとも「生きている」。ブランシェットとの対照として、これまた興味深いイキモノだ。

 シヴィアな視線が忘れられないとは言え、ダイアログの面白さや編集のリズム、音楽の入れ方などは紛れもなくアレン映画だ。今回は過去と現在を交錯させる演出になっていて、これがやはり巧い。一見過去を小出しにしているだけに見えて、ジャスミンという女を立体的に見せる術であることが見えてくる。夫が堕ちる決定的な瞬間におけるジャスミンの選択が、何ともまあ、後に引くそれだ。物質主義と精神主義の衝突に人間の哀しみと可笑しみを見る。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ