とらわれて夏

とらわれて夏 “Labor Day”

監督:ジェイソン・ライトマン

出演:ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、
   トビー・マグワイア、トム・リピンスキー、クラーク・グレッグ、
   ブリード・フレミング、マイカ・モンロー、アレクシー・ギルモア、
   ルーカス・ヘッジス、 ブルック・スミス、J・K・シモンズ、
   ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク、ディラン・ミネット

評価:★★




 ピーチパイを作る場面が良い。ご近所からお裾分けされた腐る寸前の大量の桃。それが太く荒れた無骨な手により旨そうなパイに生まれ変わる。決してきれいなキッチンではない。道具も手入れされていない。ひょっとすると埃でも入っていそうだ。それでも「直観」が大切にされたそれが、レシピ通りでは再現できない味と匂いを丁寧に伝える。

 『とらわれて夏』を手掛けたのはジェイソン・ライトマンで、おやっ、これはかなり大胆な方向転換だ。ライトマンと言えば「サンキュー・スモーキング」(06年)「JUNO ジュノ」(07年)「マイレージ、マイライフ」(09年)といった作品群でも分かるように、基本はコメディの人。そこにスポーツのスピードに似た性質を具えた会話力を持ち込んで、独自の世界を築き上げてきた。サスペンス仕立てのロマンス映画とは、どういう心境の変化か。

 そうして彼が用意したプロットはこうだ。過去に傷を抱えたシングルマザーが、心優しき脱獄犯と出会い、急速に惹かれ合うというもの。中学生になる一人息子の視点で綴られるカミング・オブ・エイジ ストーリーの側面もあるものの、そちらはあまりポイントにならない。あくまで大人の男女の禁断の愛がメイン。それも極めて清潔な。

 女はあくまで同情される存在だ。別れた夫は既に新しい女と新しい生活を始めている。いつまでも過去に縛られた彼女は囚人のような毎日。そこに現れる本物の囚人が…とことん優しいから甘ったるい。怪我をしていて、料理が上手で、野球ができて、家を修理してくれて、女の心の痛みもお見通し。聖人の心を持つ男だ。必然のように惹かれ合う。おいおい、これはニコラス・スパークス映画じゃないよな。

 けれど、いちばんの問題はそこにない。ライトマンが魅せる「官能」が吸引力に乏しい点こそが、問題だ。何かの冗談かと勘繰りたくなるくらいにベタなのだ。服を脱ぐことこそないものの、湿気のある気候を土台にして表現されるそれが、あまりに分かりやすい。南部の町。常に汗ばむ気温。露出の多い衣服。突然の接近。優しい言葉。共同作業。遠くからのひそひそ声。なんだか安いプレイみたいじゃないか?

 それでもライトマンがケイト・ウィンスレットとジョシュ・ブローリンを起用できたのは幸運だった。どちらもモデル体型なんかとは程遠く、生活感が身体つきからにじみ出ている。産毛やシワが見え、脂肪が分かり、汗の滑りが伝わる撮り方になっていて、そうであっても人間的魅力を伝えられるふたり。ウィンスレットは疲れに真実味あるし、ブローリンはニック・ノルティ風の佇まいに味が出てきた。少年役のガトリン・グリフィスとの相性も良い。メロドラマ的世界観の中で、それでも彼らの息遣いは本物に見えるのだ。まあ、メロドラマを重視して、分かりやすい美男美女の話にする手もあっただろうけどな。





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