ある過去の行方

ある過去の行方 “Le passé”

監督:アスガー・ファルハディ

出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モサファ、
   ポリーヌ・ビュルレ、サブリナ・ウアザー、
   ババク・カリミ、ヴァレリア・カヴァッリ

評価:★★




 アスガー・ファルハディ映画を観る度に感心する。この監督は演出力が高い。登場人物との距離の取り方が優れていなければ、オープニングの空港場面でのベレニス・ベジョとアリ・モサファの声が聞こえない見せ方はできないだろうし、狭くて片付いていない家の中での登場人物の出し入れから窮屈さや舞台臭さを消し去ることもできなかったに違いない。頭が良いのだろう。ただ…。

 ただ、面倒臭い。頭が良いゆえに過剰に凝ってしまうというか、色々見え過ぎて描き込み過ぎてしまうというか、殊更心理を尊んで勿体ぶった画を選んでしまうというか。観る方もここはこういう意味があるのだろう、こう言いたいのだろうと分析的に観ることを強いられる。

 『ある過去の行方』ではまず、過去と現在の切り取り方が面倒臭く、くどい。登場人物が置かれている状況はすぐには明らかにされない。モサファとベジョがまだ離婚の成立していない別れたカップルであることはすぐに察せられるものの、あとはパズルでも解くような感覚で、少しずつ情報が落とされていく。

 本来これは焦らずじっくり撮っていると好意的に解釈したいところだけれど、要所要所で非常に重要なそれが落とされるのが繰り返されるあたり、あくまでこれは作戦。物事の見方に揺さぶりをかける手法なのだ。狙いは分かっても、こうも立て続くと、何を焦らしているのかと苛立ちが優先される。

 もちろんそうした過程で登場人物の見え方が変わっていく。初めは美男美女の離婚劇に見えなかったそれに、それぞれの思惑が流れ出すことで、動きが出てくる。それ自体は悪いことではない。けれど、その思惑がまた、人工的な手入れが過ぎてかえって空虚に感じられる。

 とりわけ女が難しい。単純に神経質な女でしかなかったのが、なかなか計算高いしたたかさをを具えた女だと読めてくる。これが興味深いというよりも、呆れを誘う。所謂駆け引きをすることで、事態を余計にややこしくしている。果たしてそれは人間の複雑さを描いていることになるのだろうかという疑問がちらつく。その他の人物もしかり。

 「別離」(11年)もそうだったけれど、いずれの登場人物も被害者意識が強い。それぞれの存在が知らず知らずのうちに、他人に影響しているのが見える人物関係の織り上げ方も強調が過ぎる。うん、やはり何から何まで面倒臭い映画だ。巧くても、美味くない。講釈付きの料理は嫌だとふと思う。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ