ミックマック

ミックマック “Micmacs à tire-larigot”

監督:ジャン=ピエール・ジュネ

出演:ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、オマール・シー、
   ドミニク・ピノン、ジュリー・フェリエ、ニコラ・マリエ、
   ヨランド・モロー、ジャン=ピエール・マリエール

評価:★★★




 ジャン=ピエール・ジュネという人は、子どもが泣き出してしまいそうにいかつい顔をしておきながら、身体の芯からオシャレな監督だ。独特の美意識で固められた演出は美しいだけじゃなく、僅かに毒が含まれている。それが単なるオシャレ、空虚なオシャレに終わらせない。作品によっては毒の方が前面に出てくることもあるのだけれど、やっぱり本来の姿は「毒入りオシャレ」の方にあるだろう。

 『ミックマック』はジュネの代表作である「アメリ」(01年)の姉妹編のような映画だ。ただ決定的に違うのは、「アメリ」ではオシャレワールドに放り込まれたのが若い美女だったのに対して、『ミックマック』では中年のオッサンだということだ。そしてジュネがおフランスの底力の持ち主、ホンモノのオシャレ男だと証明するのは、そのオッサンさえもその世界観の中に難なく溶け込ませてしまったところにある。演じるダニー・ブーンはモデル体型でもないし、ハンサムでもない。ハゲじゃないけど頭を丸めていて、でもファッショナブルボーズとは程遠い。ジュネとガイ・リッチーをミックスさせたような、どこにでもいそうなしょぼくれた風貌。なのにあら不思議、奇妙な動きも手伝って、しっかりキマッている。ズバリ、オシャレオッサンだ。ブーンの若干歪んだ匂いが役柄にハマっているのも勝因か。

 オシャレオッサンをサポートする仲間たちも、皆可笑しくてオシャレで、可愛らしい。地下で共同生活を送る彼らは、はっきり言ってしまうと、ホームレスだ。しかし、それでもなお魅力的なのは、逞しい生命力に裏打ちされた、人間的な面白さが前面に出ているから。簡単な言葉にするなら、個性というものが抜群に研ぎ澄まされている。

 ジュネ映画の常連であるドミニク・ピノンは顔を見せるだけで嬉しい気分になるし、軟体ガールを演じるジュリー・フェリエは正統派の美人じゃないのに掴み所のない愛らしさがある。そして個人的に最も気に入ったのは、ヨランド・モローが演じる共同体のオッカサン的存在の女だ。釣り目に優しさを込めて、でも言いたいことははっきりと言う大らかな存在感は、本当に気持ちが良い。共同体のメンバーが伸び伸びと好き勝手できるのは、モローが好演しているからこそだ。

 反戦映画の側面も具えた物語ではあるものの、それにばかり気を取られるのはあんまり正しい見方とは言えないだろう。オシャレオッサンとその仲間たちによる、復讐という名目で仕掛けられた可愛いイタズラの数々を笑っていれば良い。もちろんその細部にはジュネの魔法がたっぷりふりかけられている。家具や食器を始め美術のイチイチがロマンティックで、バックに流れる音楽も一音一音がなんて繊細なんだろう。中盤に出てくる爆発シーンの撮り方も、いかにもジュネらしい楽しさに溢れている。

 欲を言うと、最後の最後の一手だけは俗っぽく感じられたのだけれど、結局オシャレオッサンたちの愉快な顔には敵わない。ひょっとしたらオシャレオッサンはジュネの分身なのかもしれない。





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