8月の家族たち

8月の家族たち “August: Osage County”

監督:ジョン・ウェルズ

出演:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、
   マーゴ・マーティンデイル、クリス・クーパー、ジュリエット・ルイス、
   ジュリアン・ニコルソン、ベネディクト・カンバーバッチ、
   ダーモット・マルロニー、アビゲイル・ブレスリン、
   サム・シェパード、ミスティ・アッパム

評価:★




 冒頭を観ればその映画が分かると良く言うけれど、本当にそうかもしれない。オクラホマの田舎町、夫サム・シェパードと家政婦ミスティ・アッパムの会話に妻メリル・ストリープが割り込んでくる件だけで辟易。見事期待を粉々に打ち砕く。ストリープの言葉や態度の隅々までがとにかく癇に障り、しかもそれに感じ入るところがなければ、可笑しいところもない。

 『8月の家族たち』でストリープが演じる役柄は口腔癌を患っていて、なおかつドラッグ中毒だ。力のある役者ならどうしたってやってみたいと思うだろうそれの、ど真ん中を行く。そうしてストリープはありとあらゆるテクニックを役柄に注ぎ込む。するとこれが…何ともまあ、呆れるくらいに大袈裟で押して押して押しまくるだけの演技でびっくり仰天。ジョン・ウェルズ監督は指示しなかったのだろうか。抑えて下さい…なんてストリープには言えないのか。

 元々ストリープの演技は好きではなく、いつだって冷静に見てしまうのだけど、嫌な女の役を演じるときは例外だ。「ダウト あるカトリック学校で」(08年)なんて最高だった。今回はまさしく嫌な女の役なのに、どうしてノレないのだろう。多分それは、肉親であっても人を人として扱わない言動の裏に、「家族」というカードを忍ばせるからなのだろう。それでも女は血の通った人間だったという解釈。そしてそれが煩い。カチンとくる。言い訳がましい。潔くない。

 そう、物語は家族を描く。父の失踪をきっかけに機能不全の家族が集まるというお決まりの設定の下、やはりお決まりの秘密の暴露合戦に突入する。繰り返される衝突により誰もが泣き叫び傷つきボロボロになり、しかし後に残るのは…という皮肉がちっとも効いていないのは、良くも悪くも(と言うか、悪いだけか)物語も演出も全てがストリープに呑まれてしまっているからだ。彼女のショーが長々続く。

 だから中盤、遂に長女役のジュリア・ロバーツがストリープを殺しにかかる件には、思わず拍手したくなった。展開にはちっとも感心しないものの、「このババア、言わせておけばふざけんな!」的堪忍袋の緒の切れ方が、いっそ気持ち良い。やっとガス抜きができたのだ。ところが、この場面、ロバーツの見せ場だけには終わらせないとばかりに、ストリープが「およよ、年寄りを苛めないで」風の小芝居を入れてきているのを見逃してはいけない。さすがだ。

 基になったのはトレーシー・レッツの戯曲だという。なるほど納得だ。名の知れた役者たちが入り乱れるものの、その出し入れが舞台的で、オクラホマの自然の中に放り込まれているというのに、牢獄のように窮屈な印象しか抱かせない。映画への翻訳ができていないということだろう。それぞれの悩みが明らかになっていくのも、話の真ん中にいるストリープの付け足しにしか見えない。結局笑ったのはストリープのみ。そういう映画だ。





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