グランドピアノ 狙われた黒鍵

グランドピアノ 狙われた黒鍵 “Grand Piano”

監督:エウヘニオ・ミラ

出演:イライジャ・ウッド、ジョン・キューザック、ケリー・ビシェ、
   タムシン・エガートン、アレン・リーチ、ドン・マクマナス、
   アレックス・ウィンター、ディー・ウォーレス

評価:★★




 赤い絨毯が敷かれたそのステージは、オーケストラが並ぶ場所よりも一段高いところにある。黒く輝くグランドピアノに向かう主人公。緊張の面持ちで黒鍵に向かい、楽譜をめくる。するとそこには、ミスをしたら殺すのメッセージ。ピアニストはこの危機をどう乗り越えるだろうか。

 この設定により『グランドピアノ 狙われた黒鍵』は、ワンシチュエーションムービーに見せかける。一旦演奏が始まってしまえばピアニストはそこから動けないはずで、となると抵抗手段は限られる。思い出すのは「フォーン・ブース」(02年)だ。電話ボックスから動けなくなった男の戦いが描かれていた。それと同種のサスペンスが狙えるはずだ。

 ところが、このピアニスト、動くのだ。それもかなり大胆に動くのだ。自分のパートではない箇所で突如立ち上がり、ステージ裏へ引っ込んでしまうから驚く。休憩時間に消えるのは分かる。けれど、演奏中も消えるのだ。観客のざわめきなど全く気にせず、どこからか銃口を向けている犯人とのやり取りに大忙し。天才ゆえなのか、その余裕が可笑しい。さすがリハーサルもせず、ぶっつけ本番でステージに向かう男だ。

 そう、この大胆不敵さというかバカバカしさが、妙な愛嬌に繋がっている映画なのだ。死にたくない。愛する妻が心配だ。そのためには絶対に失敗できない。いや、何とかこの危機を誰かに知らせなくては。ピアニストの焦りが手に取るように分かり、でも彼が焦れば焦るほど、観ている方は嬉しくなる仕掛け。楽曲の盛り上がりとピアニストの心音が呼応する。

 思わず失笑したのは、スマートフォンを用いる件だ。何とか危機を知人に知らせようと、ピアノを叩きながら、隠れたところでスマホを操作する。そんなわけないだろー、の世界なのだけれど、あまりに必死の表情でやるので、つい寛容な気分になる。遂には楽譜の裏にスマホを隠し、紙の上から操作を始める主人公。アンタ、さてはスマホ操作の達人だね?そうそう、スマホ繋がりで言えば、紛失した楽譜を入手するため、タブレットでネットから仕入れるというのも、なかなか憎めないバカエピソードと言える。

 …というように、呆れながらも楽しんで眺めていたのに、終幕には落胆する。遂に犯人が姿を現し、ピアニストと直接対決をする。これが身体を張ったじゃれ合いでしかなく、アッという間にどこかで見た光景になるのだ。ジョン・キューザックはそれまで声だけで不気味さを表現していたのに、姿を見せると途端に精彩を欠く。皮肉なものだ。演出の犠牲者だろう。案外良い味を出していた高慢セレブが退場するあたりから、嫌な予感はしていたけれど、的中してしまった。せめて難曲をめぐるピアニストのプライドぐらい、丁寧に描けば良かったのに。挑戦することもないなんて、あり?

 ピアニストを演じるイライジャ・ウッドが全然ピアニストに見えなくて、でもそれが悪くない。背が高くなく、首が太く、エラが張り、髭剃り跡が目立ち、指が長くなく、全体のシルエットも美しくない。耳だけはファンタジーの世界から抜け出したように尖がっている。このピアニストとしてのアンバランスさが、B級スリラーに蹴りを入れる。どこまで自分で弾いているのか分からないけれど、最後までピアニストに見えなかったあたり、狙いではないかと勘繰る。





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