フルートベール駅で

フルートベール駅で “Fruitvale Station”

監督:ライアン・クーグラー

出演:マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、
   オクタヴィア・スペンサー、ケヴィン・デュランド、
   チャド・マイケル・マーレイ、アナ・オライリー、アリアナ・ニール

評価:★★★★




 『フルートベール駅で』の主人公オスカー・グラントには困ったところが多い。前科持ちだし、遅刻癖があるし、それが原因でスーパーマーケットの仕事をクビになったばかりだし、それを恋人に隠しているし、マリファナを売り捌いて小遣い稼ぎをするし、当然のように母親に心配させるし…。

 …それにも関わらず、彼は愛さずにはいられない青年だ。自分でも今の状況が良くないことは分かっている。何とか人生を立て直したいと願っている。その思いに嘘偽りがなく、必死に人生にしがみついているところ、情けなくも好もしいではないか。加えて彼は優しい。思いやりの心を持ち、困った人には手を差し伸べずにはいられない。ハートがあるのだ。その証拠に彼の周りは人で溢れている。喧嘩はあるけれど愛し合う恋人。誰よりも可愛らしい愛娘。愛情深く見守る母親。気が良くノリの良い友人たち。道行く人とも気軽に声を交し合う。本能的に人を安心させる人なのだろう。

 マイケル・B・ジョーダンが役柄にぴったりだ。おそらく本人に似せたのだろうけれど、ヒゲは余計だし、タトゥーも要らない。でもそんなのは些細なことだ。ジョーダンの愛敬たっぷりのファニーフェイスが、嘘をつくことはあっても、自分の心には正直でいる青年の核となる部分を丁寧に掬い取っている。

 青年を待ち受ける悲劇は予め分かっている。それゆえより切なく感じられるのは、どん詰まりの生活が、もしかしたら好転するかもしれないと思わせるところが見受けられるからだ。言い合いをしてもすぐに仲直りする恋人との掛け合い。純真無垢な娘への愛。スーパーで出会った女性との何気ないやりとり。家族団欒の温かな風景。新年を迎えた直後に出会った男との会話。幸せへの種はちゃんと蒔かれていて、あとはもう、水を遣り、肥料を遣り、太陽の日を確保するだけに見える。それなのに…。

 青年の悲劇を不条理な運命という言葉で括るのは間違いだ。彼は愚かな人間の愚かな行為により人生を奪われる。そこにはアメリカ社会が抱える闇がちらつく。仕事をしたくてもできない雇用の問題。貧しさのループから抜け出せない社会構造。生活のすぐ傍にあるドラッグ。更生を誓っても周囲に振り回される人の繋がりの残酷さ。未だに無意識に残る差別意識。

 愛する人を失った者の姿が目に焼きつく。絶望に打ちのめされる人々を眺めるのが辛いのは確かだけれど、ライアン・クーグラー監督が目を留めるのはそれだけではないことに注目したい。彼の人生は、世間一般で言うところの幸せ色には染まらなかったかもしれない。それでも彼は間違っていなかった。彼は誰からも愛された。それが重要だ。愛する人と一緒にいることは決して当たり前のことではないと語り掛ける。愛する人を抱きしめたくなる映画だ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ