ワン チャンス

ワン チャンス “One Chance”

監督:デヴィッド・フランケル

出演:ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、コルム・ミーニー、
   ジュリー・ウォルターズ、マッケンジー・クルック、ヴァレリア・ビレロ、
   ジェミマ・ルーパー、トリスタン・グラヴェル、アレックス・マックイーン

評価:★★




 スーザン・ボイルとポール・ポッツは英国のオーディション番組のシンボルのような存在で、彼らが初めて取り上げられるや否や、インターネットを通じて瞬く間にその出演シーンが世界を駆け巡った。彼らにまつわる話で嫌なのは、それを抵抗なく受け入れられる人に限って、彼らの容姿に触れようとしない点だ。彼らは実力があり、それゆえ人の心を掴んだ。容姿について言うのは失礼よ、ということらしい。一理ある。でもポッツがステージに立ったときの人々の反応をどう説明するのか。

 彼らが美貌の持ち主だったとして…という話は仮定のそれになるので触れないけれど、多くの人がこんな普通の人が(或いは冴えない容姿の人が)あんな声を…というギャップの面白さに惹きつけられたというのは、どうしたって否定できないだろう。これは世間を騒がせるゴースト作曲家問題にも通じるポイントだ。今や世界的なオペラ歌手となったポッツの伝記映画『ワン チャンス』はこれに無視を決め込む。気持ち悪いくらいに。ポッツを演じるジェームズ・コーデンは可愛らしい人だ。

 ポッツの物語は人の心を掴むぞ。案の定こうして映画ができたわけだけれど、作り手がここに金の匂いを嗅ぎ取ったのは間違いない。至るところに隠し切れなかったそれが香っている。何しろプロデューサーにはサイモン・コーウェルがいて、さらにその後ろにはワインスタイン兄弟が控えている。

 彼らのポッツの人生の見方はこうだ。太っちょで、ハンサムではなく、いじめられっ子だったポッツが、何度も何度も辛い挫折を経験しながら、最後のチャンスを活かし、世界の頂点に立つ…というもの。並べられるのはポッツがいかに不幸だったかを示すエピソードであり、愉快で笑えるエピソード(主に恋愛絡み)はその合間に描写されるに過ぎない。

 けれど、幼少期の鼓膜の破裂を見せるエピソードは本当に必要だっただろうか。大人になってからも不条理な暴力に晒されるエピソードが本当に必要だっただろうか。不幸な境遇の強調はその後のカタルシスのためにどうしても必要だった。その浅はかさにゲンナリする。ポッツを語る上で外せない不幸なエピソードは、見たところ、ルチアーノ・パヴァロッティに酷評される場面、声が戻った直後に交通事故に遭う場面ぐらいだろう。

 金の匂いは不自然にじっくり撮られる水の都ヴェネチアの風景や、有名オペラ楽曲の羅列にも見受けられる。エンディングがテイラー・スウィフトの書き下ろし楽曲なのはどう考えてもおかしい。売れるならば何でも良い。そんな思惑が見え隠れし続ける映画だ。デヴィッド・フランケル監督は下手な人ではないので、軽快には見せる。飽きることはない。ただ、フランケルの力を持ってしても、味のある役者を脇に置いたテレビの再現ドラマ風に落ち着いた。無念と言える。

 ところで、どうせ英国オーディション番組出身者の映画を作るのならば、ワン・ダイレクションを取り上げれば良いのだ。もちろん本人たちに自分を演じてもらう。全員がハンサムという意外に珍しいアイドルグループ。ポッツのように残念エピソードを並ぶこともないだろう。楽しくハッピーな映画になりそうじゃないか。うん、そちらの方がずっと良い。






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