あなたを抱きしめる日まで

あなたを抱きしめる日まで “Philomena”

監督:スティーヴン・フリアーズ

出演:ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン、ソフィー・ケネディ・クラーク、
   メア・ウィニンガム、バーバラ・ジェフォード、ルース・マクケイブ、
   ピーター・ハーマン、ショーン・マホン

評価:★★




 世界には悲惨な現実がごろごろ転がっている。50年前のアイルランドの修道院では、若くして子どもを生んだ少女たちを引き取り、彼女たちを奴隷のように働かせる。そして子どもが可愛い盛り、修道院は子どもをアメリカ人に養子として売りつけるのだ。一日一時間は子どもに会えるというのが、かえってタチが悪い。どうしたって湧き上がる愛情。なのに、別れの覚悟も挨拶もないままに母子は引き裂かれる。観ている側の心も引き裂かれる。ジェーン・ラッセルの名前が出てくるのにギョッとする。

 『あなたを抱きしめる日まで』の主人公の老女は息子が50歳の誕生日を迎えた日、再びその捜索を始める。手助けするのは政治担当の元ジャーナリストの男。この取材記事をきっかけに再浮上を狙っているのが透けて見える。ふたりは修道院を訪ねるところから始め、僅かな手掛かりを頼りに、アメリカにまで渡る。この旅自体はあまり、面白くない。

 ジャーナリストがパソコン、インターネットを使いながら資料を調べ、当時や本人を知る人物を探し回るという、大変オーソドックスな、ありきたりな捜索活動だからだ。ユニークな手法もないし、思いがけない出来事が起こるわけでもない。息子捜しの旅路は、老女とジャーナリストの掛け合いの背景と化す。

 そんなわけでいちばんの見所は、主人公の人物像だ。これ以上ない絶望的な仕打ちを受け、その痛みを長年に渡って感じながら、それでも人を愛し、信じ、赦す。それに伴う痛みからも決して逃げていない。慈愛に満ちた人物像が、暗くなってもおかしくない展開に光を注ぐ。修道院を回想して「優しいシスターもいたわ」なんて言ったりもする。ジャーナリストが呆れるのも当然だ。そういえば原題は『Philomena』、彼女の名前になっている。

 ほとんどギャグになりそうな役柄をジュディ・デンチが大変可愛らしく演じる。そうなのだ。デンチが可愛らしいのだ。深いしわも、柔らかな眼差しも、完全におばあちゃんな体型も、いつものド迫力の佇まいはどこへやら、ただ息子に会いたくて会いたくて抱きしめたくて、それだけを願う老女のハートをキメ細やかに体現。そしてそれがかつてない可愛らしさに繋がっている。息子などこの際、どうでも良い。ずっとデンチを眺めていたいと思わせるぐらいに。デンチばあちゃんに可愛がってもらいたい!

 具体的な指摘からも分かるように、実話を基にしている。映画としてはそれに気を遣ったことが透けて見え、生温さが拭えない。老女を愛しつつ、でもどうしてももやもやが残る。感動作としてまとめるのではなく、修道院の闇を描く方が焦点がボケることなくよっぽど面白くなったのではないか。





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