オール・イズ・ロスト 最後の手紙

オール・イズ・ロスト 最後の手紙 “All Is Lost”

監督:J・C・チャンダー

出演:ロバート・レッドフォード

評価:★★★




 周りに何もない大海原にたったひとりで放り出される。果たして生き延びることができるだろうか。…という筋だけだと「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(12年)と勘違いしそうだけれど、より現実味が意識された『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』には3D映像もなければファンタジックな奇跡もない。ましてやトラなんて出てこない。説明も何もないまま、ひたすら生へのもがきが描かれる。

 落とされる情報は極僅かだ。ヨットでインド洋を航海中、おそらく大量の靴を積んでいた漂流中のコンテナにぶつかり、浸水が始まる。穴を塞ぐという基本的な仕事から始まるサヴァイヴァルはしかし、敢えて映画的な装飾を避ける。そう言えば、主人公の老人の名前さえ出てこない。

 無線による呼び掛けや通り掛った船へのアピールは出てくるものの、その他はとりたてて役立ちそうな術はない。魚を獲ろうとしても全然釣れないし、サメが姿を見せても襲ってくる気配はない。できることと言ったら、救命ボートに乗り移り、ヨットから食料を運び出すことぐらいだ。あとに映るのは大嵐や船の損壊といったピンチをいかに乗り切るか、ひたすらに身体を張る姿だ。そしてそこから生と死を読み取る。やや退屈に思えるところもあるものの、その意思は明確だ。

 ヨットから救命ボートに移るときが、決定的瞬間だったと思う。沈みゆくヨットと共に老人は、肉体を捨てたように見える。残されたのは魂だけだ。魂だけの存在になった老人は、いつしか死を考え始める。それによって生がはっきりとした輪郭を持って立ち上がる。

 ロバート・レッドフォードは思い切った。相変わらず髪の毛がふさふさしているのはご愛敬だけれど、70代半ばという年齢を隠すことなく見せつける。身体を張ったパフォーマンスには心臓が止まらないか心配になるし、メイクとは言え顔が赤く妬けていくのが痛々しい。何より手の老いを全く隠さなかったのは、これまでのレッドフォードでは考えられなかったことではないか。

 カメラはほとんどレッドフォードに付きっ切りだ。少し離れたところから見た画は僅かしかなく、ずっとレッドフォードに寄り添っている印象。当然レッドフォードの焦燥がダイレクトに伝わる。そういうシンプルさを選びながら、ラストシーンには遂に映画的な演出がちらり。我慢した分爽快だという気持ちと、堪え切れなくて勿体無いという気持ちが半分半分…といったところか。





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