ミッシング・ポイント

ミッシング・ポイント “The Reluctant Fundamentalist”

監督:ミラ・ナイール

出演:リズ・アーメッド、リーヴ・シュライバー、キーファー・サザーランド、
   ケイト・ハドソン、オム・プリ、シャバナ・アズミ、マーティン・ドノヴァン、
   ネルサン・エリス、ハルク・ビルギナー

評価:★★




 『ミッシング・ポイント』のような映画は反応に困る。映像表現だとかセリフだとか演技だとかを堪能するよりも先に、題材そのものの切実さが迫ってきて、出来映え云々について言い辛くなるからだ。同時多発テロ以後にイスラム系の人々が受けてきた偏見は、今となっては(いや、当時からそういう意見はもちろんあったのだけど)愚かしいとしか言いようがない。作り手の言い分には最初から納得できる。

 パキスタンからアメリカンドリームを夢見てやってきた青年が直面する現実。一流企業に就職が決まり、マンハッタンの高層ビルで才能を発揮。社長にも認められ、結果を出し、美しい恋人も獲得する。その積み上げてきたものが9.11以後、静かに崩れ始める。社会の中に浮かび上がるイスラム系への偏見は、車のタイヤをパンクさせたり、ツバを吐いたり、暴言を浴びせたり…という愚かな言動を、同僚や友人レヴェルで生み出す。愛と利益だけを頼りに生きる青年はしかし、自身の中の怪物とも向き合うことになる。

 この部分が弱い。アメリカ社会で活躍し、すっかりそこに溶け込んだと思っても、自分のルーツが消えたわけではない。それゆえにどうしても相容れないものも存在する。そこに着目してこそ、偏見が一層の迫力を持って浮上するのではないかと思うのだ。ここに描かれる偏見は、もちろん辛いことには違いないものの、実は予測可能だ。バカモノが単純にそういう行動に走ることは理解できる。でもそれを見せるだけで終わるのは勿体無い。

 具体的に例を挙げる。二機の飛行機が貿易センタービルに突っ込んだ映像を見たとき、青年は言うのだ。「哀しみや怒りよりも先に思った。“なんて大胆なんだ”」。笑みさえ浮かべる。さらには「良心が目覚める瞬間、一瞬喜ばなかったか」と自身へ問い掛けもする。無意識のうちに芽生えるそれこそが、怪物の正体を暴く鍵にもなるのではないか。

 怪物はやがて青年の冷静さを奪い、恋人との軋轢をも生む。決定的になるのはアーティストである彼女が開く個展なのだけど、作品の内容が大変抽象的で分かり辛いため、その後の衝突が頓珍漢に見えるのが無念だ。優しい恋人との間に横たわる溝は、青年を絶望の淵に追いやるもののはずで、そこに説得力がない。

 リズ・アーメッドはとにかく目が綺麗なのが印象的だ。若い頃は初々しかったのが、次第にいかにもイスラム的な風貌に変身していく。ただ、目の美しさだけは変わらない。ここは成功半分失敗半分と言ったところで、青年の無垢な部分が良く現れていると思う一方、無垢なものが翳りを帯びていくところをもっと見たかったという気もする。結局イスラムに寄り過ぎた気配を感じなくもない。





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