それでも夜は明ける

それでも夜は明ける “12 Years a Slave”

監督:スティーヴ・マックイーン

出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、
   ルピタ・ニョンゴ、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、
   サラ・ポールソン、ポール・ジャマッティ、ブラッド・ピット、
   アルフレ・ウッダード、ドワイト・ヘンリー、
   アデペロ・オデュイエ、クヮヴェンジャネ・ウォレス

評価:★★★




 カメラが人間の背よりも遥かに高いサトウキビが生い茂る畑を分け入っていく。すると視界が開ける。そこには汗を流して仕事に精を出す多くの黒人と、それを馬車から見守る少数の白人がいる。いきなり奴隷制度を象徴する画が目に焼きつく。『それでも夜は明ける』はひとりの黒人男が奴隷として生きた12年間を描く。

 実のところ、話自体はそれほど意外性のあるものではない。奴隷が自由を獲得するまでを描くならそうなるだろうという予測の範囲内の展開だ。主人公など、あと少しで狂言回しの役割だけに落ち着く危険をまとっている。それにも関わらず、この映画は多面性に富んでいる。何故か。

 それは何と言っても、主人公が黒人は黒人でも自由黒人であることが大きいだろう。自由証明書なるものを持ち、得意のヴァイオリンを活かして音楽家として妻子と幸せに暮らす、言わば白人に近い黒人。それが騙されて奴隷として売り飛ばされ、理不尽に過酷な状況に追いやられる。否が応でも彼の気持ちとの同化を余儀なくされる。そう、主人公の体験を観る者にあたかも同じように感じさせる作りになっている。「ゼロ・グラビティ」(13年)と同じ仕掛けがなされる意味は大きい。

 自由黒人の思考も興味深い。良い白人も知っているがゆえに、生まれたときから奴隷として生きる者とは微妙に考え方が違っていて、黒人たちの輪の中からは若干離れたところに居場所を見つけるしかない。学があり、才能があり、社会を知っているために彼は、奴隷制度を別の角度から照らし出す。

 白人も決して全員が同じ立ち位置にはいない。現実がそうであるように感情の揺れ幅や深味は異なる。奴隷制度への向き合い方も千差万別。社会的立場の違いもあり、人間社会・人間関係の複雑さ・変態性が浮き彫りになる。もちろん奴隷たちはその影響をあからさまに受ける。いちばんの悪役と言って良い綿花畑を営む白人が実は、美しい黒人奴隷と彼女に嫉妬する妻の間で揺れるあたりなど、実に面白いところを突いている。

 自らも黒人であるスティーヴ・マックイーンは、悪しき奴隷制度への冷静な視線を大切にしている。背景となる南部の風景の美しさを決して見落とさないところなど、物語の奥行きを深める大きな効果を上げている。その中で響き渡る鞭の音が、いかに痛みを伴うものかを知っている。

 キウェテル・イジョフォーがルピタ・ニョンゴを鞭打つ場面の迫力が凄まじい。ニョンゴが石鹸を手に入れるため、僅かな時間いなくなったことを発端に始まる強烈な悲劇が、長回しで撮られる。それぞれの思いが引き裂かれ、泣き叫びながら衝突を繰り返す。決して忘れてはいけない痛みが、いや忘れたくても忘れられない痛みがそこにはある。





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