終着駅 トルストイ最後の旅

終着駅 トルストイ最後の旅 “The Last Station”

監督:マイケル・ホフマン

出演:ヘレン・ミレン、ジェームズ・マカヴォイ、クリストファー・プラマー、
   ポール・ジャマッティ、アンヌ=マリー・ダフ、ケリー・コンドン、
   ジョン・セッションズ、パトリック・ケネディ

評価:★★★




 「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」によりあまりにも有名なロシアの文豪レフ・トルストイの晩年が描かれる。…と言っても、真面目で堅苦しいエピソードの羅列に終わっていないのが有難い。『終着駅 トルストイ最後の旅』はトルストイとその妻ソフィアを取り上げ、夫婦というものは何なのかを突き詰めていく。

 ソフィアは世界の三大悪妻の一人とも言われる人物だそうで、物語上でもトルストイと激しく対立、派手な口論を繰り広げる。これが大変見もの。映画の中で男女の深刻な争いの場面が延々続くと陰鬱な気分になってしまうものだけれど、激しい罵り合いが続いてもそれでもなお、それに見入ってしまう。その根底に夫婦の愛、それも48年間連れ添ってきた愛が敷かれているからだ。夫婦にしか分からない、夫婦にしか通じ合うことのない、夫婦同士でさえも気づかないそれが、どの場面にもちらついている。大喧嘩の直後に、蓄音機から流れる音楽に合わせて踊る場面、或いはベッドで鳥マネ合戦に興じる場面など、実に納得の流れ。キレイゴトでまとめられるものなんかじゃないとよく分かる。

 トルストイの秘書を大変巧く動かしているのにも注目したい。トルストイの作品の著作権を放棄させてそれを国民のものにしようとする一番弟子側と、著作権を手元に置いて家族を守ろうとするソフィア側の行き来が、秘書を曖昧なポジションに就かせることで軽快になっている。緊張するとくしゃみが出てしまうという設定も、緊張感を緩める面白い効果を上げている(ちょっとコントみたいなんだけど)。若鮎のように瑞々しい彼の幼い恋は、トルストイ夫妻の恋との対比をなしている。そして何より、秘書の目線があるがゆえに、物語を俯瞰で見ることができるのがイイ。演じるジェームズ・マカヴォイもいつも通りの好演だ。

 もちろんトルストイ夫妻を演じるクリストファー・プラマーとヘレン・ミレンの演技も申し分ない。特にミレンが圧巻。一見すると、金に目の眩んだ強欲な女なのかもしれない。しかし、ミレンはそんな単純な見せ方などしない。長き日々を共にしてきたからこその憎悪と、そして愛情を複雑に絡ませて、極めて立体的な人物に仕立てて上げている。感情に任せて愚かな行動に走っても、それを人間的な魅力として魅せられるのだ。

 弟子と妻の間で板挟みになったトルストイが家を出てからの展開はやや単調に思える。それまでチョコマカ動いていた秘書がトルストイの傍から離れられなくなってしまったのがいちばんの原因。メロドラマに流されそうになってしまったところがある(結局流されはしなかったけれど)。

 それにしてもロシアのトルストイ主義への傾倒には目から鱗。まさか村まで作ってしまうほどだったとは!ロシアにおけるトルストイの歴史的なポジションについてはもっと深く掘り下げられる余地がありそうで、面白い。





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