ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 “Nebraska”

監督:アレクサンダー・ペイン

出演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、
   ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク、アンジェラ・マキューアン、
   メアリー・ルイーズ・ウィルソン、ランス・ハワード、デヴィン・ラトレイ

評価:★★★★




 100万ドルの宝くじが当たったと思い込んだ老いた父親とその付き添いの息子を主人公にしたロードムービー。…なんて書くとハートウォーミングな家族ドラマを連想するものの、どっこい『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』はアレクサンダー・ペイン映画。分かりやすく安易な、ちょっと放っておくと腐ってしまいそうなレシピには興味を示さない。

 まず、画が寂しい。モノクロの映像が選ばれているのは珍しいことではないものの、その寂しげな空気感は貴重ではないか。温か味や柔らかさを狙ったというよりは、ネブラスカの荒涼たる風景を強調したかったようだ。旅の途中に出てくるガソリンスタンドもレストランもバーも病院も、揃って物哀しい気分を誘う。

 それにそう、出てくる人間が老人ばかりなのだ。しかも、どいつもこいつも宝くじに当たった主人公に金をせびる。とっくに忘れていただろう過去の恩や借金を楯に、なんとか恩恵を得ようと群がる老人たち。そこには一見、人生の先輩であるはずの彼らへの敬意なんてものはなく、こうして人は老いていくのだと諦めにも似た何かを感じさせる。

 そもそも主人公がいんちきの当選通知に必死にすがるというのが哀れを極める。しかも彼はモンタナからネブラスカまで1000キロ以上を歩いていこうとするのだ。食うに困らない生活だけれど、残りの人生、特に希望があるわけではない。そこに降って沸いた当選の手紙。そんないかにも胡散臭いものが、老人の拠り所になるのが切ない。

 ブルース・ダーンがとにかく良い。悪人顔の人だと思ってはいたけれど、やはりその印象は変わらない。アル中で偏屈で頑固で口も悪く、しかしその足取りは倒れないのが不思議なくらいに頼りない。目を離せなくて困ったところの多い老人の佇まいに翳りを漂わせる。特に全身を映したショットがイイ。グッと来る。

 ダーンと息子役のウィル・フォーテの掛け合いには、老いる物哀しさがたっぷり感じられるものの、もちろん侮蔑の眼差しとは無縁だ。老いることで浮上する問題をありのままに受け入れていくところに、人の美しさがしっかり感じられる。ややフォーテが物分かりが良過ぎるものの、ダーンの好き放題の言動を考えると、良いバランスかもしれない。ふたりが電車も来ない線路で入れ歯を探す画、最高じゃないか。

 旅を続けることで主人公の人生が断片的に見えてくる。どうやら若い頃から困ったところは多かったようだ。妻との関係も簡単ではない(ジューン・スキッブが可愛らしくて爽快な毒舌演技)。友人・親類関係も雑多だ。ただ、そこには揺るぎないものもしっかりあり、それが明かされる件はつい涙ほろり。「100万ドルあれば父さんを老人ホームへ入れるよ」と妻に言われていた男が愛しくて堪らなくなる自分に気づく。甘い!と突っ込みを入れながら。





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