ダラス・バイヤーズクラブ

ダラス・バイヤーズクラブ “Dallas Buyers Club”

監督:ジャン=マルク・ヴァリー

出演:マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レト、ジェニファー・ガーナー、
   デニス・オヘア、スティーヴ・ザーン、グリフィン・ダン、
   マイケル・オニール、ダラス・ロバーツ、ケヴィン・ランキン

評価:★★★




 1985年テキサス。ロデオを愛するカウボーイのロン・ウッドルーフは仕事場で倒れ、運び込まれた病院で余命30日だと告げられる。HIVに感染、既に発症しているのだという。とは言え、難病映画にはならない。ウッドルーフがそれを拒否するのだ。そして言い放つ。「この俺を30日で殺せるものなんてねぇ」。頼もしいではないか。

 そうして帰宅したウッドルーフが真っ先にやることが、煙草に飲酒、ドラッグ吸引、そして女を抱くことなのだから、呆れるやら可笑しいやら。けれど、この「俺の欲求は誰にも止められない」的なふてぶてしさが、案外生きる力に繋がっていることを見逃してはいけない。自分を諦めた時点で、人は急速に弱っていくものだろう。ウッドルーフはあくまで自分の命のために動き出す。くたばってたまるか。そういう男の佇まいが、弱々しくなるはずがない。

 ウッドルーフの欲求は大胆不敵な行動に化ける。知識を仕入れることから始まった戦いが有効薬の有害性の指摘へと繋がり、より効果的な薬を独自に発見、世界各国を自らの足で旅して仕入れるまでになる。そうして行き着く先が『ダラス・バイヤーズクラブ』なる会社で、違法に密輸した新薬を使って金儲けに走るというのが、何ともまあ、豪快だ。会員権を売り、薬を無料で配るという方式が可笑しい。

 …と言うようにウッドルーフは感傷を寄せつけないことで生き延びたような男で、マシュー・マコノヒーはそこのところを良く承知している。マコノヒーは大幅な減量を敢行。最初こそのあまりの変貌に唖然とさせられるものの、そこに注目が集まるのは本意ではないとばかりに、今そのときのウッドルーフの打算やしたたかさを丁寧に積み上げることで、役柄と完全な一体化を実現していく。思い切り人間臭いのが良い。聖人化しないアプローチの先に、本物のヴァイタリティを浮上させる。脚本や編集、演出以上に演技が物語を支える。

 ところでウッドルーフはゲイ嫌いだった。HIVに感染したウッドルーフは当然ゲイとの接触が多くなる。当時HIVが同性愛者が感染するものという偏見に支配されていたことは記憶に新しい。女装家のレイヨンとウッドルーフの関係の変化は、物語上最も美しいものだ。偏見を憎悪に変化させた態度で接するウッドルーフが、その心を徐々に軟化させていく。生きる欲望がどんどん膨れ上がる一方、偏見が静かに落ち着いていく。そのバランス感覚の良さが、物語の風通しを良くする。

 ジャレッド・レトがレイヨンを切なくもチャーミングに魅せる。ドラッグ漬けな点を筆頭に困ったところも多いものの、そのくせ人を惹きつける性質も備えていたレイヨン独特の優雅さよ。愛されたい、笑いたい、もっと長く生きたい。その佇まいが次第に翳りを強くしていくのが、痛い。

 気がつけばウッドルーフは、患者のことを第一には考えない医師や製薬会社、政府へ立ち向かうファイターだ。反体制派のシンボルと見ることも可能だろう。けれど多分、ウッドルーフはそういう見方をも拒否する男だ。彼は英雄になることなど興味はない。ただ、生き延びたい。軸にあるその想いがあまりに強力でぐらつくことがなく、それゆえに輝いて見える。彼が見せる変化や成長に嘘臭さがないのは、そのためだ。





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