大統領の執事の涙

大統領の執事の涙 “Lee Daniels' The Butler”

監督:リー・ダニエルス

出演:フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、
   デヴィッド・オイェロウォ、ジョン・キューザック、ジェーン・フォンダ、
   キューバ・グッディング・ジュニア、テレンス・ハワード、
   レニー・クラヴィッツ、ジェームズ・マースデン、
   ヴァネッサ・レッドグレーヴ、アラン・リックマン、リーヴ・シュライバー、
   ロビン・ウィリアムス、クレランス・ウィリアム・サード、ヤヤ・アラフィア、
   ネイサン・エリス、マライア・キャリー、アレックス・ペティファー

評価:★★




 主人公のモデルになった人物は約30年間、七人の大統領に仕えてきた執事なのだという。政治に興味がないと言っても、アメリカの中枢で働くということは、歴史が動く瞬間を目撃するということだ。ドワイト・アイゼンハワーからロナルド・レーガンまで、どんな裏話が登場するのか身を乗り出すものの、教科書で習う以上のことは出てこないから拍子抜け。

 これはまことにおかしな事態で、と言うのも歴代大統領にはいずれも名の知れたスター俳優が起用されているのだ。全く似ていないのにメイクで無理矢理似せながら、しかしほとんど顔見せだけで終わるというのは、大統領にも俳優にも失礼ではないか。モノマネ・ショーの傍らで執事は、空気であり続ける。見所はほとんど角刈りな髪型で登場した演者のフォレスト・ウィテカーが次第に禿げていくメイク、そしてデリケートな照明に照らされた邸内部の家具や食器ぐらいだ。

 ホワイトハウスでドラマは起こらない。『大統領の執事の涙』のメインテーマに置かれるのは、差別時代から徐々に権利を獲得していくまでの黒人史だ。政策との交錯はほとんどないため、それを描くために用意されたのが、デヴィッド・オイェロウォ演じる執事の息子役だ。活動的な彼は大学へ進学後、黒人の権利獲得のため身体を張って動く。公民権運動に積極的に参加、白人社会に真っ向から挑み、キング牧師に師事。遂にはブラックパンサー党にまで関わるようになるのに、つい笑う。ちゃっかり政治家に転身するのも、さすがに作為が過ぎないか。

 このあたりはリー・ダニエルスの悪いところが出た感じで、この監督は「プレシャス」(09年)がそうだったように、テーマに夢中になると、つい過剰に走る癖がある。ホワイトハウスを隠し芸大会風に撮るぐらいなら(つまりキャスティングが豪華なほどに興味はないのだろう)、そこでの議論を公民権運動ともっと積極的にぶつけるべきだった。実話物ということで遠慮があったのか。

 ホワイトハウスと公民権運動を結ぶのが、ウィテカーとオイェロウォだけというのは頼りない。それぞれ信念を持ったふたりは、オイェロウォが活動家になることで、辿る人生が分かれていく。オイェロウォが人権問題に積極的であることは分かりやすい。ただ、ウィテカーもまた、空気であり続けることで黒人の尊厳を勝ち取ろうとした存在だ。それが上手に伝わったかどうか。父子のドラマとしての決着を見る限り、どうもウィテカーが折れて仲直り…のような印象しか受けず、これではウィテカーが間違っていたように見えはしないか。息子の気づきが有耶無耶に終わる。

 「闇は闇を追い払えない。闇を追い払えるのは光だけ」とキング牧師は言う。バラク・オバマ大統領の誕生でそれを納得させるのはさすがに安易だけれど、終幕のウィテカーが「本当の顔」と「白人に見せる顔」を一致させるのにはホッとする。ウィテカーはようやくイディ・アミンの呪縛から解き放たれたのではないか。

 なお、大統領モノマネ・ショーで最も可笑しかったのは、レーガン大統領夫妻に扮したアラン・リックマンとジェーン・フォンダだ。どういう組み合わせなんだ。リックマンの強引メイクとイイオンナ風をアピールするフォンダの佇まい。やる気の全く感じられないリチャード・ニクソン役のジョン・キューザックとの落差にお口あんぐり。





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