MUD マッド

MUD マッド “Mud”

監督:ジェフ・ニコルズ

出演:タイ・シェリダン、ジェイコブ・ロフランド、マシュー・マコノヒー、
   リース・ウィザースプーン、サム・シェパード、マイケル・シャノン、
   ジョー・ドン・ベイカー、レイ・マッキノン、サラ・ポールソン

評価:★★★★




 まだ身体的にも精神的にも成長過程にある14歳の少年と「俺を守ってくれるのは、このシャツと拳銃だけだ」と言いながら孤島でボートをねぐらにする謎の男の交流。『MUD マッド』がカミング・オブ・エイジ ストーリーとして、昔からよくあるパターンの映画であることは間違いない。けれど、退屈を誘うところはまるでない。それどころか時折新鮮な風が吹く。人間同士がぶつかりあるドラマとして、ずしり腹に来る場面もある。

 舞台となる南部の町と島が面白い。言わずと知れたミシシッピー川が流れるその町は、所謂憧れの町からは程遠い。少年が両親と一緒に暮らすボロ家は川の上に浮かんでいるし、近隣住民も似たり寄ったり。町中へ出ても若者たちは表面を格好つけるばかりで、中身があるようには見えない。いつかは出ていきたいと思っている者も多いだろう。川の底は見えない。泥の灰色で濁っている。町全体がそれにハマって抜け出せないみたいだ。

 少年の目はまだ、本当の町や社会というものが見えてない。けれど、男との出会いをきっかけに、現実と向かい合うことが多くなる。ここで効いてくるのが、登場人物の関係がシンボリックに撮られていることだ。少年、謎の男、両親、親友、好きな女の子、川向かいに住む男、モーテルの女…それぞれが過去と現在を通じて繋がっていくことで、少年と男の類似性が浮上を始める。両親の離婚や一途な恋。思いがけず人生の師となる人との出会い。男の背景は直接的に描かれることはないものの、少年のそれと通じるところは多く、おそらくそれゆえに少年も無意識の内に惹かれていったはずだ。精神的に双子のような、親子のような関係が、物語の寓話性を高める。風通しが良い。

 ところが、やっぱりふたりは違うのだ。似ているようで、やっぱり違うのだ。ボートの存在が分かりやすい。男が住まい代わりにしているボートは大きく、パワーもあり、外観は大変立派だ。少年が最初、自分と友人の隠れ家にしようとするのも無理はない。しかしそれは結局、動かない。洪水のせいで木の上に引っ掛かっているし、エンジンは故障している。船体には穴も開いている。少年が移動用に使うボートは小さく、小汚いけれど、よっぽど使える。少年と男はボートと同じだ。

 それに気づいたとき、少年は深い傷を負う。強い裏切りを感じる。全てが吹っ飛んでしまう絶望すら抱く。青春の常とは言え、胸が痛む。けれどそれが、少年を成長へと導く。憧れは現実の前に簡単に崩れ去り、そこからまた新しい何かが始まる。説得力をもたらすのがマシュー・マコノヒーであることは言うまでもない。

 小汚くとも鍛えられた身体といかにも南部男らしいハンサムな顔立ちのマコノヒーがカリスマ性を存分に発揮。それが次第に褪せていく感じがよく出ている。実は臆病で、したたかで、情けなくて、身勝手で…でも抗えない魅力を放つのが厄介だ。マコノヒーが見せる現実感が、少年を浮わつかせ、泣かせ、そしてまた輝かせる。自身もまた少年との出会いにより、本当の自分と向き合うことになる様もさり気なく見せる。

 マコノヒーに身体全体でぶつかっていくタイ・シェリダンの姿が胸に沁みる。内気なようで、案外大胆不敵。自信満々かと思えば、ハートは硝子でできている。不幸な出来事やその対処に揉まれる度にシェリダンが輝く。シェリダンの存在そのものが、青春なのだ。





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