エヴァの告白

エヴァの告白 “The Immigrant”

監督:ジェームズ・グレイ

出演:マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナー、
   ダグマーラ・ドミンスク、アンジェラ・サラフィアン、イリア・ヴォロック、
   グレン・フレシュラー、アントニー・コローネ

評価:★★★




 いきなり女が置かれる状況がとんでもない。1920年代、戦時下のポーランドから海を越えてアメリカ、ニューヨークへやって来るも入国審査で引っ掛かる。病気の妹は隔離され、自身も国へ還される寸前。そこに現れた紳士の手引きより間一髪難を逃れるも、紹介された針子の仕事がショーの踊り子に変わり、なのに行き着く先は娼婦ときたもんだ。頼りの叔母夫婦にも裏切られて絶体絶命。移民の女たちを使って売春を斡旋する偽紳士の言うことを聞くしかない。自由の女神がほとんどギャグアイテムに見える。

 そんなわけで『エヴァの告白』は堂々たるメロドラマだ。このジャンルで重要なのは女優だ。ヒロインにどれだけ感情移入できるか、或いは共感はできずともどれだけ興味を持てるか。マリオン・コティヤールはいつもより薄い化粧で現れ、しかし娼婦に堕ちてからはばっちりメイク。ジェットコースターに乗り込んだような人生に負けない、何としてでも生き延びるという意思が、目や佇まいから感じられる。

 けれど、ジェームズ・グレイがより力を入れて演出するのは偽紳士役のホアキン・フェニックスだ。フェニックスが演じるのは、所謂クズ男だ。礼儀正しい立ち居振る舞いで安心させるのは作戦に過ぎず、手を差し伸べるふりをしてどんどん女を貶めていくのだから。過酷な空間にヒロインを閉じ込め、心が弱ったときにシラッと登場、優しい言葉を投げ掛けるポン引き。

 それにも関わらず、この男から目が離せない。それどころか同情すら抱かせる。人間の得体の知れない複雑な深層を感じさせる男なのだ。男の振る舞いは意識的なのか無意識なのか分からない。ひとつ言えるのは、男が女を、それでも愛しているということだ。

 思うに男は虐げることでしか愛を示すことのできない厄介なヤツなのだ。もちろん娼婦に貶めることが愛情表現だとは到底言えない。しかし彼はその眼差しの向こうに、悔恨と密着した温もりを確かに放出しているではないか。キスを迫り拒絶されたときの激昂は、勘違い甚だしくもあり、哀れでもあり…。

 感心するのはやはり、フェニックスだ。コティヤールが魅せるのは、運命を受け入れながらも道を見つけるヒロインであり、演技は受け身になる。バランスを考えても、そうせざるを得なかった。フェニックスが常に意表を突いた演技を見せるからだ。セリフで捲くし立てる場面の迫力もさることながら、無言の演技がキテいる。愛を上手く伝えられず、近くで見守ることしかできない男のダメな部分を、実に魅力的に魅せる。フェニックスが差し出すのは純情だ。嫌いだとはっきり言われれば、言葉も出てこない。口上場面がたむけんにしか見えないのには目を瞑る。

 阿漕なことをやってのけながらフェニックスは結局、コティヤールを押し倒すこともできない。ふたりは男と女の関係にならないのだ。フェニックスが全身で差し出す愛とコティヤールが彼に対して感じる愛は、性質が微妙に異なるからだ。そのすれ違いがメロドラマの燃料になる。途中フェニックスの従弟役でジェレミー・レナーが出てくるも、その磁力の差は圧倒的で三角関係は成立しない。生きようともがくことは罪ですか?ヒロインの問い掛けを聞いたフェニックスの覚悟が胸に迫る。

 いつの間にか主役がコティヤールからフェニックスへ代わってしまったような…、でもそれで良いような気がしている。





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