LIFE!

LIFE! “The Secret Life of Walter Mitty”

監督・出演:ベン・スティラー

出演:クリステン・ウィグ、アダム・スコット、シャーリー・マクレーン、
   キャスリーン・ハーン、ショーン・ペン

評価:★★




 「虹を掴む男」(47年)のリメイクということは忘れても良いのではないか。随分毛色が異なる。ひょっとしたら原作となるジェームズ・サーバーの短編に近いテイストは『LIFE!』の方なのかもしれない。好きな女性に声もかけられず、会社では冴えない扱いを甘んじて受けている男が主人公。彼は現実逃避が趣味で、妄想の世界に真昼間から飛んでいく。そこでは彼はいつだって英雄だ。この完全なる喜劇テイストの内容を、ベン・スティラーはドラマ寄りに演出する。

 見せ場は当然、妄想場面だ。冒頭、駅で電話の最中に妄想の世界に迷い込んだ彼は、何かを見つけると高所から飛び降り、窓を突き破って、家事で炎と煙が充満するアパートに突入する。救うのは愛する女性の愛犬だ。アッという間に犬を助けた彼は、それを彼女に手渡し、感謝の言葉を獲得する。前触れもなく突然妄想の世界。静かだった画面は、妄想場面との対比を狙ってのことだと言わんばかりの気合いの入れよう。視覚効果もばんばん投入される。

 確かに視覚は刺激されるのだけれど、案外頭に残らないのは、これを「マジ」にやってのけるからだ。妄想は主人公にとっては決して笑い事ではない。そうせざるを得ない、そういう生き方しかできない、逃げなのだ。スティラーはそれを陽気に笑い飛ばすなんてできない。その代わりに妄想に寄り添う。そうだ。感動を膨らませよう。

 まるでどこかの会社のキャッチコピーのようだけれど、実際、その匂いは濃い。主人公は「LIFE」という名前の雑誌社に勤務している。その雑誌のコピーがそのまま映画のテーマだ。世界に飛び出そう。そして人生を明るく照らそう。ことある毎にサブリミナル的にコピーが流れ、次第に宗教めいた雰囲気まで漂い始める。冴えない人生。それを人のせいにはしていないか。さあ、自ら切り開くんだ。まことに結構なことだけれど、押しつけがましさが、胡散臭さを呼ぶことには慎重になった方が良い。

 そうなのだ。ここでのスティラーはほとんど笑いを放棄して、説教を垂れるのだ。いくらでも凝れるはずの妄想場面は序盤でアイデアを使い果たし、後は妄想と現実の境界が曖昧になった空間を提示。そこで主人公がもがく様を、大変真面目に見つめている。それまで窮屈な人生だった男が殻を破って飛び出そうとする様、それを眺めて酔っている。もしかしたら結果はついてこないかもしれない。でもだからってどうだって言うんだ。ほら、もう彼は物語と初めとは別人じゃないか。きっと新しい人生が待っている。…というわけだ。めでたいと言うか。生温いと言うか。結末、明らかになる雑誌の表紙写真でそれも極まる。

 つくづく思うのは、「感動」の装飾は危険ということだ。ちょっと良い話でまとめようとする作為は、案外見破られやすい。グリーンランド、火山、大海、アフガニスタン…背景がそれを頭にインプットするための道具としてしか機能しない罪は大きいのではないか。スティラーならば「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」(08年)ぐらいの大胆さを見せて欲しかった。





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