ラッシュ プライドと友情

ラッシュ プライドと友情 “Rush”

監督:ロン・ハワード

出演:クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール、オリヴィア・ワイルド、
   アレクサンドラ・マリア・ララ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、
   クリスチャン・マッケイ、デヴィッド・コールダー、ナタリー・ドーマー、
   スティーヴン・マンガン、アリスター・ペトリ、ジュリアン・リンド=タット

評価:★★★★




 1976年はフォーミュラワンの歴史に残るシリーズとして語り継がれているらしい。その主役となったのはジェームズ・ハントとニキ・ラウダだ。序盤はラウダが圧倒的リードを誇るも、中盤ハントが生まれ変わったような追い上げを見せる。そんな中、ラウダが大事故に遭って戦線離脱、その間にハントがポイントを積み重ねる。このままハントの逃げ切りかと思ったところでラウダが奇跡の復活を果たす。

 『ラッシュ プライドと友情』でロン・ハワードは、この表向きの物語の裏側を探る。ポイントはもちろん、F1レーサーふたりの人物像だ。毎年参戦する25人中ふたりが死ぬというF1グランプリで、レーサーは反逆者か変人か夢想家だと言われる。これに当てはめるならば、ハントは反逆者で、ラウダは変人になるだろうか。

 ハントは勝手気まま、自由奔放な性格で、四六時中女を傍らに置くプレイボーイ。与えられたマシーンをアッという間に自分の手足のように操る本能型。しかし、レース前には毎度、極度の緊張から必ず吐いてしまう弱さを具えている。大胆不敵さと繊細さが同居したハントを、クリス・ヘムズワースがカリスマ性たっぷりに演じる。ソー役のときよりも大分ほっそりするも、チャーミングな笑顔は健在。自ら太陽となり、ハントの傲慢さを輝かせる。

 ラウダはというと、頭脳派タイプ。レース前に徹底的にマシーンを調整し、最良の状態でコックピットに乗り込む。マシーンの性能も実力のうちだと言い放ち、事実、勝利を手堅く自分のものにする。良く言えば計画的、悪く言えば頭でっかちなラウダを、ダニエル・ブリュールが静かな物腰で演じる。かと言って勝負事にこだわらないわけではなく、サーキットに出れば勝負の鬼となる、低くも熱い体温が的確だ。月のように慎ましく、ラウダの傲慢さを照らす。

 そう、このふたり、どちらもかなり傲慢だ。そりゃそうかもしれない。レースに出れば、死ぬ確率は20%にも上るのだという。それを突破し、なおかつ優勝争いを演じるのだから。タイプの異なる傲慢さが何度も衝突する。衝突の度に火花が飛び散る。煙が上がる。ドラマが立ち込める。ふたりは水と油のように違う存在でありながら、どこかで強烈に惹かれ合う。単なる友人でも好敵手でもない、微妙な距離が面白い。おそらくこの距離は、1976年という年だからこそのものだろう。それぐらい微妙な距離。

 おそらく人が憧れるのはハントだ。生きたいように生きるを地で行く男。放蕩的な立ち居振る舞いを、そのままマシーンに持ち込む不敵さよ。けれど人は、それだけでは生きられないことも知っている。ラウダの冷静さもまた重要なのだと。理想と現実が摩擦を生む様を見つめる映画と言い換えることも可能であり、それが物語の奥行きを深いものにしている。

 ハワードの成功は次のセリフに表れる。大事故から復活した際、レースの強行開催を提案したハントがラウドに謝罪するときの、ラウダのセリフ。「おまえの勝利を見て、生きる闘志が沸いてきた。俺をここに戻したのもおまえなんだ」。なんともまあ、傲慢にして、臭いセリフだろう。陳腐スレスレだ。けれど、これが良いのだ。少年漫画的なノリに落ちていく一歩手前で踏み止まり、違う角度からではあるものの、ふたりのレーサーがF1にどう向き合っているかを浮上させる。

 その流れで突入するクライマックスの最終戦。舞台は日本、富士スピードウェイ。ハントとラウダ、男たちの本質は、実はこのレースだけでも十分過ぎるほどに伝わる。本能を信じるハントと、理論で向き合うラウダならではの結末が、苦味と清々しさを生む。この場面に限らずハワードのレース演出は絶好調そのものだ。揺れるカメラ。ドライヴァー目線。煙。スローモーション。バックミラー。意表を突く角度。重低音。音楽。その臨場感がハントとラウダの人間的厚みと密着する。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ