メイジーの瞳

メイジーの瞳 “What Maisie Knew”

監督:スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル

出演:オナタ・アプリール、ジュリアン・ムーア、
   アレクサンダー・スカルスガルド、スティーヴ・クーガン、
   ジョアンナ・ヴァンダーハム、ジェシー・ストーン・スパダッチーニ

評価:★★★★




 思うに、子どもがこの世でいちばん嫌いなのは両親のケンカだ。お化けも嫌。注射も嫌。ピーマンも嫌。勉強も嫌。いじめっ子も嫌。でも、親が怒鳴り合う声ほどに、子どもを傷つけるものはない。自分ではどうにもならない負のパワーに、小さな身体はすっぽり包まれる。メイジーは今、まさにその状態だ。けれど目は瞑らない。じっと事態を見守り続ける。子どもの角度からバケモノと化した大人の身勝手さを凝視し、抵抗を試みる。

 もしメイジーを演じるのがオナタ・アプリールじゃなかったらどうだろう。仮にお世辞にも可愛らしいとは言えない容姿の女の子だった場合、『メイジーの瞳』は感じ入るところの多い映画だっただろうか。もしかしたらアプリールの可愛さに丸め込まれただけなのではないか。我ながら軽薄な意見だと承知しつつ、アプリールの愛らしさが物語の吸引力になっていることは間違いない。

 とは言え、アプリールの愛らしさが万人受けするそれでないことは明白だ。目が妙に冷めているのだ。表情が豊かとも言い難い。それもそのはずメイジーの両親は離婚。英国人の父親もロックシンガーの母も愛してるを連呼しながら、そのくせ傍にはいてくれない。メイジーは急いで成長するしかなく、それがアプリールのやや大人びた佇まいにマッチしている。高級ではないもののコーディネートで魅せるファッションもドンピシャのハマり具合。池の場面のカラフルなゾウがたっぷりプリントされたトップスと黄色いスカート、髪飾りの組み合わせが最高。ピアスはやり過ぎだけれど。

 メイジーと両親の関係からは、家族とは何だろう、血の繋がりとは何だろう、という疑問が浮上する。血縁が思いがけない力を発揮することもあるけれど、それに寄り掛かるばかりでは思わぬところでしっぺ返しを喰らう。子どもと親の関係を描いた作品は大抵、その絆を強調して綺麗にまとめるものだ。ところが、この映画はそれを拒否する。大胆で、誠実な結末だと思う。カタルシスを感じさえする。

 ジュリアン・ムーアが演じる母親はほとんど漫画的だ。けれどこれは案外、鋭い描写なのではないか。子どもを愛していることは間違いない。しかし人生はそれだけでは前に進まない。彼女はバランスを取るのが下手なのだ。メイジーを夜のレストランに残して去る件には唖然としながら、怒りだけではなく哀れみの視線を注いでしまう。彼女はそうするしかできないのだ。ムーアの力も大きいだろう。

 そうした両親が引き起こすドタバタ劇の最中、両親のそれぞれの再婚相手が急接近していく展開はホッとするところ。彼らは人間という生き物の良心の象徴だ。本当の親のようにメイジーに愛を注ぎ、彼女を守り抜こうとする。そうして気がつけばふたり、本当の愛により互いを引き寄せ合う。子どもを見れば、親が分かる。メイジーに認められたふたりは、正真正銘のナイスカップルだ。演じるアレクサンダー・スカルスガルドとジョアンナ・ヴァンダーハムの相性も良い。

 とりわけスカルスガルドが良い。メイジーにとって母親の知り合いとして登場し、構ってくれる優しい人になり、大好きなお兄ちゃんになり、本当の父親のようになる。スカルスガルドのデカい図体がメイジーを持て余す。それが次第に上手に対処できるようになっていくところが微笑ましい。アプリールと同じ画面に入ったときの見映えの良さも注目だ。





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