ウルフ・オブ・ウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート “The Wolf of Wall Street”

監督:マーティン・スコセッシ

出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、
   マシュー・マコノヒー、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー、
   ジャン・デュジャルダン、ジョン・ファヴロー、ジョン・バーンサル、
   ジョアンナ・ラムレイ、クリスティン・ミリオティ

評価:★★★★




 ふと「ピカレスク」という言葉が過ぎるものの、すぐさま思い直す。主人公のジョーダン・ベルフォートはそんな言葉で括れる人物ではない。オフィス内をライオンが歩くし、タイトルにはオオカミという言葉が入る。けれど、個人的にはシャチを連想する。イルカのようなエレガンスともサメのような分かりやすい恐怖とも無縁。シャチの予測不能の大胆不敵さと狡猾さが、ウォール街へ放り込まれたらベルフォートが出来上がるのではないか。シャチは海のギャングと呼ばれる。マーティン・スコセッシが監督しているのは偶然だろうか。

 そんなわけで『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、他の何よりも重要なのはベルフォートの人物像だ。80年代に頭角を表した株式ブローカーは酒を愛する。女を愛する。ドラッグを愛する。しかし最も好きなものは金という男。彼の英知の全ては金儲けのために使われ、懐に転がり込んできた大金は酒池肉林の実現のためにばら撒き放題。ここには道徳なんて言葉は存在しない。禁欲は何よりも敵だ。ベルフォートは罪悪という概念を持ち合わせておらず、それが彼の怪物性を大きく膨らませる。自信家の割りにセックステクニックが未熟なのも、奇妙な愛敬に繋がる。

 当然のことながら、スコセッシは彼を裁かない。欲望の実現のためにひたすら斜め上を目指して突き進む暴走列車のように撮り上げる。ここでは批判など無意味だ。社会性を考察するのも後からにすれば良い。怪物的な上昇志向を燃料にした列車は当然、何度も障壁に直面する。しかし列車は急には止まれない。衝突を繰り返し、その度に何もなかったようにシラッとスピードを上げていく。この異様な猪突猛進の気配よ。

 そこには当然笑いが生まれる。真面目に聞いても俄かには信じられない話。オフィス内で酒が降り注ぎ、裸の女たちが歌い踊り、白い粉が空中を舞う画が次々登場。家に帰れば執事が主の居ぬ間にセックスパーティ。正気を失った部下は大勢の前で自慰行為に耽り、その他大勢はボスの空虚なる演説に涙を浮かべる。赤裸々な画が自然発火し、黒い笑いをダイナミックに弾けさせる。

 栄光の先に没落があるのは世の常だ。ベルフォートも例外ではない。悪事が遂に逮捕という結末を手繰り寄せる。ウォール街の頂点に向かって突き進む際にある種のカタルシスがあるのはもちろんだけれど、そこから転げ落ちていく際にも同じように快感があるのが面白い。ベルフォートの持つ怪物性と、それをじっくり観察はしても分析はしないスコセッシの冷静なスタンスと編集のおかげで、最初から最後まで可笑しい。堕ちていく姿が哀愁を断固拒否する。善悪の世界に迷い込まないので、かえって多面的な見方ができる。ベルフォートの栄光と没落がアメリカン・ドリームの化身にも見える。

 ベルフォートありきの作品を背負って立つのは我らがレオナルド・ディカプリオで、間違いなくキャリアベストの演技だろう。再就職先の寂れた会社で電話越しに売り込む場面だけで、いかに優れた役者か観る者を選ぶことなく分かるというものだけれど、何しろ3時間ベルフォートの生き様を描く映画ゆえ、全編見せ場と言って良いシーンの連続。老けが表れてきた顔面筋肉とシワの芸術的な動き。長い手足のタコを思わせる柔軟性。まるで生き物のように耳に絡みつく口から飛び出す言葉の数々。常にハイテンションをキープし、画面を突き破る勢いで、ベルフォートの怪物的精神を解放させていく。そういう役柄を、演じる自分を笑い飛ばせる器の大きさも重要だ。

 ジョナ・ヒルやマーゴット・ロビーら共演俳優たちは、ディカプリオの圧倒的パワーに呑まれるのではなく、それを自らのパワーに変える。乱れる悪徳の花。天国と地獄が一緒くたになる世界。過激さが真実を生む、ある種の美。中毒性が凄まじい。

 おぞましくも笑える爆弾の連続攻撃の中でも、賞味期限切れのドラッグにより完全に別の世界に行ってしまう場面が最高に可笑しい。もはや自分の身体のコントロールすら失った状態のディカプリオとヒルを相当な時間をかけて映し出す。ディカプリオがポパイになる件を筆頭に、抱腹絶倒を極める。ベルフォートもその近辺をうろつく者たちにも呆れるしかないものの、どうしても嫌いにはなれない。興味をかき立てられる。穴という穴が開き切った身体に人間の正体を垣間見る。





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