オンリー・ゴッド

オンリー・ゴッド “Only God Forgives”

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン

出演:ライアン・ゴズリング、クリスティン・スコット=トーマス、
   ヴィタヤ・パンスリンガム、ゴードン・ブラウン、
   ヤヤイン・ラシャ・ホンガム、トム・バーク、
   サハジャク・ブーンサナキット、ピットチャワト・ペッチャヤホン

評価:★★




 一定のスタイルを持った監督は強い。どんな題材でも映画という箱の中でその世界観を自在に操り、好き嫌いの程度こそあれ、それを見映え良く思うがままにデザインしていく。例えばウェス・アンダーソンやコーエン兄弟、スパイク・ジョーンズにジャン=ピエール・ジュネ。ニコラス・ウィンディング・レフンもそのひとりだ。ようやく日本に入ってきた一連の作品群でも、そのスタイルは物語以上に強烈な個性を放っていたではないか。

 ただし、「絶対」ではないことを『オンリー・ゴッド』は証明してしまう。思い入れが強く、そこに陶酔という名の粉が振り掛けられると、思いがけず反発の力が動くことがある。呆れを内包した笑いを生むこともある。人はそれを独り善がりの美学と呼ぶ。大抵は侮蔑の眼差しとセットになる。

 舞台となるのは、僅かに近未来の匂いを醸し出すタイのバンコクだ。赤い照明に照らされた刀が映るファーストショット。汗の匂いが濃いムエタイの試合会場の様子。裏社会に生きる者たちによるドラッグ取り引き。それらを流れるように撮るのにレフン降臨の気配を感じて興奮するものの、持続力は弱く、その後ピークは訪れない。

 レフンはどうやらタイ…と言うか東南アジアの空気に魅せられたらしい。そこはキリスト教価値観と仏教的価値観が衝突する地であり、それを映像として立ち上がらせることこそ、使命だと受け取ったように見える。復讐をキーワードに血が乱れ飛ぶ。雑多な街並み。まとわりつく湿気。そこに「善」と「悪」が入り混じる。

 厳密にはそんなに簡単な区別はなされていないものの、ライアン・ゴズリングらのいる「悪」の場所は赤い世界。ヴィタヤ・パンスリンガムが鉄鎚を下す「善」は青い世界として切り取られる。その赤と青が次第に混じり合い、気がつけばそこは魑魅魍魎が戯れる危険な場所だ。

 それを見せるために存在する暴力が前述のように、一方通行の美学でしかないのが問題だ。一つひとつの殺しが目一杯のタメと共に演出され、いずれも目にこびりつくものの、あまりに邪気と珍味に乏しいのではないか。20分で語ることのできる話を90分に伸ばしているため、やたらもったいぶっているものの、殺しの裏側にはたいした情念が見当たらない。早い話、ゲームに見えるのだ。

 それは多分、物語上「悪」よりも重要な「善」が機械的に処理されているからではないか。パンスリンガムはある意味、神の遣いだ。悪を見つけては残酷な方法を用いて成敗する。彼はレフンの手の平の上で暴れ、しかしそこから決してはみ出さない。「善」が奥行きに欠け、これでは「悪」も抵抗し甲斐がない。その通り、ゴズリングは復讐の機会を狙うも、お行儀良く返り討ちに遭う。今回レフンが用意した箱は、見かけほどに派手ではない。小さい空間に閉じ込められた人間たちが息苦しそうだ。





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