ビフォア・ミッドナイト

ビフォア・ミッドナイト “Before Midnight”

監督:リチャード・リンクレイター

出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
   シーマス・デイヴィ=フィッツパトリック、ジェニファー・プライアー、
   シャーロット・プライアー、ウォルター・ラサリー

評価:★★★




 「ビフォア・サンセット」(04年)から9年。ジェシーとセリーヌが帰ってくる。ヨーロッパの長距離列車の中で出会ったふたりは束の間のデートをロマンティックに楽しんだ。9年後に再会したふたりは情熱を一瞬にして取り戻した。そして『ビフォア・ミッドナイト』でふたりは…強烈な所帯臭さを漂わせて現れる。

 現在ふたりはフランスで暮らしているらしい。結婚はしていないものの、なんと双子の女の子の親になっている。夏休みはアメリカから呼び寄せたジェシーと前妻の間に生まれた息子と一緒に、ギリシャで過ごす。歴史を感じさせる石造りの街並みこそ画になるものの、ふたりの間に横たわるものはグッと現実的だ。

 それはシリーズではお馴染みの会話劇に顕著だ。ジェシーもセリーヌも相変わらず喋る喋る。どちらも聞き手と話し手の切り換えが異様に早く、しかも捻りをぐいぐい押し込んでくるのが可笑しい。空港からの帰り道、車の中で昔飼っていたネコや離れて暮らす息子、予期せぬ仕事の問題等を話題にした会話から、ふたりとの再会を改めて感じ入る。生活感を感じさせても、テンポはあの頃のままだ。

 現実的な会話の数々は次第にパートナー関係の危機を導くことになる。けれど、暗い気分になるだけでは終わらない。生きていると人生は難しくなる。経験が言動に縛りをかける。本能より理性が優先される。そういう真実が「時間」という、これだけはどんな人にも平等なそれと絡み合い、ふたりの佇まいが翳りを帯びてくる。もちろん他人事ではない。人生の儚さが立体的に浮かび上がる。しかもずっしりと重い。

 ジェシーとセリーヌを演じるイーサン・ホークとジュリー・デルピーの容姿の変貌もそれを補強する。ホークは9年前の時点で既に随分草臥れていたけれど、今回はデルピーが驚かせる。身体全体にすっかり肉を蓄えているのだ。ワンピースでは隠せない腰周りのご立派感、たぷたぷの二の腕の破壊力もさることながら、ふくらはぎがもろオバチャンなのに驚愕。しかもデルピーはこの身体つきで、トップレスヌードまで見せる。久々に目撃した、元美人女優の見たくはなかったヌード。でもこれが物語のテーマと合致する。

 そんな中セリーヌはジェシーに問い掛ける。「今日列車で出会ったら、私を誘いたいと思う?」。普通に考えれば答えは「ノー」になるだろうに、ジェシーはそこまでバカ正直ではない。では何を伝えるべきなのか。それを探る映画と言って良い。一緒に暮らす時間が長いほど理想と現実の落差に打ちのめされるのは、ふたりに限ったことではない。リチャード・リンクレイターはそれを念頭に置き、舞台劇に見える危険を回避しながら、ふたりを明け透けに衝突させる。練られた言葉がふたりを痛々しくも美しくも見せる。ふたりの未来をまた覗いてみたくなる。





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