THE ICEMAN/氷の処刑人

THE ICEMAN/氷の処刑人 “The Iceman”

監督:アリエル・ヴロメン

出演:マイケル・シャノン、ウィノナ・ライダー、クリス・エヴァンス、
   レイ・リオッタ、デヴィッド・シュワイマー、ジェームズ・フランコ

評価:★★★




 リチャード・ククリンスキーはアメリカの犯罪史に名を残す殺し屋として知られている。逮捕されるまでの20年間で100人以上を殺害したというのだから怖ろしい。死亡時期をあやふやにするため、死体を冷凍保存していたことからアイスマンと呼ばれる。この男をマイケル・シャノンが演じる。

 なるほど適役だ。今のハリウッドで狂気を表現させたら右に出る者がいない性格俳優。ただ、あまりに狂気が真に迫っているゆえか、タイプキャストされているのが最近の悩み所。アリエル・ヴロメンはひょっとして、そのことを歯痒く思っている人ではないか。シャノンを起用するのであれば、狂気を描くにしても、その多面性を大切にしたい。掘り下げたい。解体・再構築したい。『THE ICEMAN/氷の処刑人』はそれを目指した映画だ。

 シャノンの目は暗い。青味がかったその黒い瞳の奥には、誰も覗いたことがない宇宙が広がっている。ヴロメンはそこに入り込むことを恐れない。入った先にある迷宮の中に、妻や娘といった愛する家族の存在を見つけるのが面白いところだ。殺し方にパターンがなく、ターゲット殺害のためには非情に徹する男にしては、その宇宙は静かで穏やかだ。温もりすら感じさせる。

 ククリンスキーは表向きは為替ディーラーとして働きながら、実はマフィア専属の殺し屋として生計を立てている男。そうする動機には家族の生活を守ることが第一にあった。もちろん家庭では良き夫、良き父親だ。必然的に生まれる二重生活が生々しい。浮ついたところのないシャノンの眼差しが凄味を増し、いつしかそれにより生まれた歪が生活を軋ませていく感じが良く出ている。

 実話を基にしているだけに、細部描写がいちいち現実感を伴う。昔からの知り合いとの軋轢。タレコミ屋の娘。マフィアの右腕の暴走。もうひとりの殺し屋が煽る不安。そうした積み重ねがククリンスキーをますます立体的に仕立て上げる。自分では気づかないほどの綻びが、焦燥に繋がっていく。

 シャノンの大男ぶりが素晴らしい。ククリンスキー本人がどうだったかは知らないけれど、大きな割りに捉え所のない佇まいが殺し屋にぴったりだ。妻役のウィノナ・ライダーが小柄なので、並んだときの対比が強烈。ライダーをペロッと食いそうな気配。でもそれは確かに愛情と密着しているのだ。切なくて、危険な、肉体。

 冒頭シャノンがライダーとデートするときのセリフが良い。ほとんど初めて話す会話の中で、不意に飛び出すセリフ。「アンタはあれだな。ナタリー・ウッドを可愛くしたみたいだな」。これをシャノンが言うのだ。あの顔で言ってのけるのだ。意表を突く。いつもと同じように見えて、確実に違うシャノンがいる。ヴロメンによるシャノンの狂気の考察は鋭い。





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