オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ “Only Lovers Left Alive”

監督:ジム・ジャームッシュ

出演:ティルダ・スウィントン、トム・ヒドルストン、ミア・ワシコウスカ、
   ジョン・ハート、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト、
   スリマン・ダジ、カーター・ローガン、ウェイン・ブリンストン

評価:★★★




 世界的ヴァンパイア・ブームに乗り、インディーズシーンの雄ジム・ジャームッシュまでもが吸血鬼映画を撮る。…と言っても高校生の三角関係や分かりやすい種族間抗争が描かれるはずもなく、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』はジャームッシュならではのそれとして提示される。ぐるぐる回るレコードを俯瞰で捉えたファーストショットから、「ジャームッシュ!」と叫びたくなるカットがてんこ盛り。

 序盤はジャームッシュならではのユーモア感覚が目につく。アダムとイヴ。アダムのミュージシャンという職業。スカイプを用いたやりとり。YouTube。フランツ・シューベルト。クリストファー・マーロウ。ギターやヴァイオリン。医者を間に置いた血液の違法な購入。アッとびっくり血液のアイスキャンディ。凡庸な作家ならば寒いだけで終わる危険の高いギャグやシチュエーションによるくすぐりが、不思議な快感を生み落とす。

 放り込まれるのはティルダ・スウィントンとトム・ヒドルストンで、恋人同士を演じるふたりのキャスティングがとにかく素晴らしい。この映画に限らず、人間界の者とは思えない容貌のふたりが、吸血鬼として妖しく美しくハマっているのだ。ひとりずつの画も強力だけれど、同じ画面に入ったときに濃厚に漂う、退廃と官能の気配はどうだ。恍惚の表情に完璧に心奪われる。

 ヒドルストン演じるアダムがデトロイトに住んでいるのが象徴的だ。ジャームッシュは別に、ヴァンパイアに頑なにこだわった作りを目指してはいない。彼はアメリカという国を探し続けてきた監督だけれど、ここでもそれは変わらない。アダムは何度も何度も人間をゾンビだと形容する。そして彼らの暮らす世界の混沌を大いに嘆く。何百年と生きるヴァンパイアの目から見ると、今という世の中は、決して生きやすい場所ではない。その憂いが画面に独特の陰鬱さを植えつける。

 ただし、暗く物哀しいだけには終わらない。世を嘆きながらも、そこには寄り添うアダムとイヴがいる。生きる苦しみに悶えながらも離れないふたり。そこに詩情が流れる。ふたつの身体が重なるだけで、一緒に横たわるだけで、何か尊いものを目撃しているような気分になる。この世の終わりが近づき、しかしそこから始まるものもある。

 イヴの奔放な妹が投入されるのと同じように、物語の刺激剤となっているのが、ジャームッシュ映画と言ったらこの要素を忘れてはいけない、音楽だ。メランコリックな闇の世界に誘う重低音。耳にこびりついてはなれないその旋律が、いつしかヴァンパイアの叫びのようにも聴こえてくる。





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