鑑定士と顔のない依頼人

鑑定士と顔のない依頼人 “La migliore offerta”

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

出演:ジェフリー・ラッシュ、シルヴィア・フークス、ジム・スタージェス、
   ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン、ダーモット・クロウリー

評価:★★




 ジュゼッペ・トルナトーレが描く世界にはどうしても警戒心が働く。中年オヤジの妄想の過剰な美化と言うか、一途な愛への盲目的な崇拝と言うか、とにかくその実体には人間の変態性が敷かれているというのに、それに無視を決め込んで、これぞ純愛だと大きな顔をするのが嫌なのだ。

 それが『鑑定士と顔のない依頼人』では、そこまで生理的不快感は感じない。ひとつはミステリー色が強いためだろう。ロンドンで名の知れた潔癖症の美術鑑定士が主人公。オークションの進行役としても、世間から一目置かれる存在。その彼にある屋敷に置かれた家具や骨董品、絵画といった年代物の鑑定依頼が来る。ところが、依頼人と思しき若い女は、決して鑑定士の前に姿を見せない。何故か。トルナトーレは他の何よりも、ストーリーテラーとしての立ち位置を頑丈にする。悪くない。

 ただ、それでも主人公の人物造形には抵抗を感じるところがある。一体化は難しい。遂に姿を現した美しい依頼人と鑑定士が恋に落ちる。その際に選ばれる画面には結局、運命の愛により破滅する男の美学というヤツが前面に押し出される。そんなものはもちろん、独り善がりなものだ。でもトルナトーレは自信満々な態度を崩さない。その主張がくどいと言うか煩いと言うか。

 鑑定士はずっと前から絵画をコレクションしている。それも美女の肖像画ばかり。収納する部屋には壁一面、四方八方に肖像画が立てかけられている。そこでゆっくりするのが幸せなとき。「女性への敬意は恐怖に等しい」と言う彼は、何と童貞だ。破滅するのは見え見えなのに、男は想いを止められない。その姿は滑稽ではあっても、同調を誘うのは難しい。あぁ、それでも俺は彼女を愛さずにはいられない。その声が精液臭と密着する。

 でもまあ、前述のようにこれまでのトルナトーレ映画よりは断然マシな方で、これはもう、名優ジェフリー・ラッシュのおかげだ。鑑定士役に完璧にハマるラッシュの所作には、磁石に引き寄せられるように見入る。冒頭のオークション場面や独りきりの食事場面だけでもラッシュの上手さは一目瞭然。川の水のように流れるセリフも手伝って、ほとんど芸術と言って差し支えない。彼の言動を目の当たりにしたら、何でも言いなりになってしまいそうだ。主人公の孤独にちらつく異常性すらも味わい深く魅せる。

 ラストに明らかになる真相には笑う。三文小説によくあるパターンを、ここまで堂々持ち込むとは…。途中から急激に立ち上がる陳腐な気配があっさり的中してしまう。だったらそれらしく遊べば良いのに…。変に芸術映画を気取る必要はないだろう。





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