ゼロ・グラビティ

ゼロ・グラビティ “Gravity”

監督:アルフォンソ・キュアロン

出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー

声の出演:エド・ハリス

評価:★★★★




 一瞬にして目と心を奪われる。『ゼロ・グラビティ』とは無重力状態のこと。地表から600キロも上空の宇宙空間には、音を伝えるものがない。気圧も酸素もない。アルフォンソ・キュアロン監督はこの基本を体感に導く。これまで映画で何度も見てきた「宇宙遊泳」を、ワルツでも踊るかのように切り取る。新鮮な風が吹く。

 物を言うのは、3D映像だ。冒頭の「長回し」から、宇宙に浮かんでいる感じが実に本当らしく見える。塵すらも芸術に見える宇宙の神秘。美しさと恐ろしさが一緒くたになった不思議な場所。そこに足を絡め取られる。どうやって撮影したのか、何が何でも知りたくなるものの、その疑問が頭から消えるのは早い。ヒロインと同化してしまい、それどころではなくなるのだ。

 ロシアの人工衛星が爆発し、そのときに生じた破片が他国の衛星を次々破損させる。アメリカのスペースシャトルも甚大なる被害を被る。果たしてヒロインは地球に無事帰ることができるだろうか。ここでの宇宙はとてつもなく大きな鳥かごだ。そこから抜け出すのは簡単ではない。生命力が勝つか。諦めが勝つか。

 手に汗握るサスペンスが畳み掛けられる。宇宙ゴミの来襲は爆発を引き起こす派手なものなのに、音が聞こえないのがかえって怖い。一度動き出したら自力では止まらない法則にも翻弄される。知識はもちろん必要だし、度胸がなければ決して乗り切れない局面も度々訪れる。ヒロインはかつて、四歳になる娘を亡くしている。それが落とす影が、生命力をじりじり脅かす。

 ヒロインの生まれ変わりを三度目撃することになる。一度目は、やっと辿り着いた宇宙ステーションでヒロインが無重力の中に浮かぶ場面。二度目はある訪問者を受け入れる場面。最後は水の中、宇宙服を脱ぎ捨てる場面。まるで生まれたときの姿に一歩ずつ近づいているような奇妙な感覚。生まれ変わりの度に、ヒロインは命の重さを突きつけられる。とりわけ最初の浮遊場面は、母の羊水に浮かんでいるようにしか見えなくて、強烈に脳裏に焼きつく。

 視覚効果が大量に取り入れられながら、しかしキュアロンは人間の肉体をじっくり観察することを忘れない。ヒロインを演じるサンドラ・ブロックの身体が素晴らしい説得力を持つ。均整の取れた二の腕と太腿。そのスポーティな肢体が頼もしく、でも時には頼りなく…。気温が上がらない宇宙空間の中で、ブロックは肉体に熱を帯びさせる。その熱はもちろん、生きる力に繋がっている。ラストシーンでカメラは、ブロックの身体を下から見上げるように撮る。その神々しさよ。生の女神が舞い降りる瞬間だ。

 キュアロンは宇宙空間で起こった惨劇を描きながら、その向こうに人生の旅を見つめたのだろう。生きることの意味が激しく揺さぶられる。誰かに寄り添いたくなる。自分の足で大地を確かめたくなる。キュアロンが魅せる旅は、シンプルにして、多面的だ。





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