フィルス

フィルス “Filth”

監督:ジョン・S・ベアード

出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェイミー・ベル、ジョアンナ・フロガット、
   イモジェン・プーツ、エディ・マーサン、ジム・ブロードベント、
   イーモン・エリオット、シャーリー・ヘンダーソン、ナターシャ・オキーフ

評価:★★★




 タイトルにある『フィルス』には、1. 英語のスラングで警察、2. ゴミ、汚物、堕落、3. 悪党といった意味があるらしい。主人公のブルース・ロバートソンはこの形容がピタリ当てはまる男だ。クリスマスが近づいて浮かれ始めたスコットランドの街中で、日本人留学生殺害事件が起こる。この事件を解決して警部補への出世を目論むロバートソンの数日が描かれる。画面いっぱいに咲き乱れるのは下衆の花だ。

 まず腑に落ちるのはジェームズ・マカヴォイの大変身だ。「トランス」(13年)はこの作品のための、言わば小手調べだった。大変思い切った役作り。ヒゲをぼうぼうに生やし身体をだらけさせ、所作をオッサン風に絞ったらあら不思議、ラッセル・クロウ風の悪徳刑事の出来上がり。一見クマさんっぽい愛敬を感じさせながら、その考えが浅はかであることを突きつけるとんでも行動を連発する。

 中盤までの見ものは、マカヴォイの弾けっぷりだ。何しろこの男、刑事でありながらコカインを吸いたい放題、アルコールを浴び放題、同僚の妻とシラッと不倫に走り、売春にも全然抵抗なし。子どもに中指を立て、金持ちの友人の妻に電話越しに卑猥な言葉を送る。仕事中に入れ込むのは出世のライヴァルたちの蹴落とし作戦だ。あと少しで世界は自分のものになる…みたいな中二的思考をガソリンにして、エンジン全開でぶっ飛んでいく。時折カメラを睨みつけたり、早口を畳み掛けたり、意外に冷静な周辺分析を見せたり、下衆の花を踏みつけにしながら「オレサマ」な道を行く。この余裕は何なんだ。クマっぽいなんて書いたけれど、むしろブタ野郎と言った方がしっくり来る。いや、それじゃあブタに失礼か。

 そういう呆れを通り越して感心するほどの暴走の先に、男の人間らしさ、人間的弱さが浮上するのには落胆する。あぁ、この男も所詮はひとりの人間に過ぎないのか。過去にこうなってもおかしくない哀しみを経験したのか。そういう同情のような歩み寄りが、この男に限っては気持ち悪く感じられる。男を分析する必要なんてない。下衆の怪人として根拠なく暴れさせる方が面白いだろう。

 …とそう思った直後に訪れる、ある展開にギョッとする。何か仕掛けがあるとは仄めかされていたものの、なるほどそう来たか。おいオマエ、俺に同情しただろう。バカなヤツ。どこからともなく男の声が聞こえてくる。フィルスらしいおぞましさ。一瞬の同情がアッという間に吹っ飛ぶ。男の全身がヘドロに飲み込まれていく。その変態から目が離せない。

 結末は少々感傷が強い。大オチにあっけらかんとした笑いがあるとは言え、湿っぽくなったのは大きなマイナスポイント。それよりも見たかったのは、殺されても生き返るくらいのしぶとさやふてぶてしさだ。ゴキブリこそが男のライヴァルだ。あれ?なんだか男を好ましくすら思っている自分に気づく。





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