ウォールフラワー

ウォールフラワー “The Perks of Being a Wallflower”

監督:スティーヴン・チョボスキー

出演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、
   メイ・ホイットマン、ジョニー・シモンズ、ポール・ラッド
  ケイト・ウォルシュ、ディラン・マクダーモット、ジョーン・キューザック

評価:★★★




 壁際にぽつんと佇んでいたのに、ダンス・パーティで人目を気にすることなく弾ける場面。葉っぱで意識が吹っ飛び、愛しい女の子にミルクシェイクを作ってもらう場面。真夜中のドライブ、ラジオから流れる曲をバックに、立ち上がった荷台で両手を広げる場面。真っ白な雪の絨毯の上で、物思いに耽る場面。「ロッキー・ホラー・ショー」(75年)の劇、露出の多い衣装に身を包んで歓声を浴びる場面。

 『ウォールフラワー』には印象的な画がたっぷりある。登場人物と同じことを体験したことがあるわけではない。むしろ多くの人は平凡な高校生活だったろう。けれど、主人公たちを眺めていると懐かしい。ほろ苦い。胸が痛い。多分それは、生きていると誰もが知らぬ間につけている「傷」を忘れていないからだ。

 主人公チャーリーの場合、傷は周りと思うようには溶け込めない不器用さと密着する。チャーリーは高校の壁の花。登校初日に、高校生活が残り1385日だと憂うような少年だ。はっきりとは描かれないものの、どうやら前の年に重い出来事を経験したらしい。そのせいもあるのか臆病な魂は、広くない学園内で自分の居場所を見つけられない。

 これは、全く、重大な悩みだ。社会に出れば選択肢が広がる分、居場所は見つけやすい。でもチャーリーはまだ高校生。家と高校の往復だけで大抵の世界が完結してしまう。即ち居場所が見つけられないということは、アイデンティティーの問題に繋がる難題に違いないのだ。この不確かな不安と戦っている若者は、おそらく思うより多いだろう。

 ただし、チャーリーにも光は射す。それも案外早く。はみ出し者の兄妹と知り合うことで、居場所が少しずつ形を現す。それを繊細に描き出すところがミソだ。しかも、何でもかんでも兄妹任せの居場所探しにはなっていない。チャーリーが完全なる受け身になる場面は意外なほど少なく、むしろ自ら居場所を探して足を踏み出す。若干無理をしながらの前の向き方が、切なく、胸を打つ。

 初めて「彼女」ができる件が可笑しい。別段気に留めていなかったタヌキ顔の同級生のペースに乗せられて、いつの間にか付き合うことになっているというパターン。自己主張が弱く、相手を気遣い、その上経験もないがゆえの、悲劇にして喜劇。チャーリーの困り顔に吹き出す。と言っても、作り手はチャーリーを笑い者にしたいわけではなく、この件の前には素敵なプレゼントを用意する。恋しい女の子とのファーストキスだ。しかも、こんなセリフつき。「あなたのファーストキスは、あなたを愛している人とではないとダメだわ」。

 青春の楽しさや痛みがヴィヴィッドに浮上するのは若手俳優のアンサンブルが輝いているからだ。青春映画は配役が極めて重要で、その点ローガン・ラーマン、エズラ・ミラー、エマ・ワトソンはいずれも申し分のない煌きを見せる。穏やかなラーマンが時折覗かせる、危険な匂い。奔放に生きるミラーの、時に不安定な物腰。

 しかし、何と言ってもワトソンが輝いている。ハーマイオニーのイメージからの完全なる脱却。ショートにした髪の毛がフレッシュだし、細いカチューシャとピアスの組み合わせも可愛らしい。スタジアムジャケットも、彼女が着れば、十分オシャレだ。ラーマンとワトソンの間に流れる電流がとても心地良い。あるゲームの最中、ラーマンが不意にワトソンにキスをしてしまうのも無理はない。





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