ワン・ダイレクション/THIS IS US

ワン・ダイレクション/THIS IS US “One Direction: This Is Us”

監督:モーガン・スパーロック

出演:ナイル・ホーラン、ゼイン・マリク、リアム・ペイン、
   ハリー・スタイルズ、ルイ・トムリンソン

評価:★★★




 モーガン・スパーロックと言ったら「スーパーサイズ・ミー」(04年)だ。一カ月間、一日3回、マクドナルドのファストフードだけを食い続けたらどうなるか。自らを実験台にしたドキュメンタリーを手掛けた男。ユーモアセンスが鋭く、優しい。その彼が人気絶頂、英国のボーイズバンド、ワン・ダイレクションのワールドツアー&プロモーションとその裏側を収めた映画を撮る。ひょっとしたら変わった斬り口の映画ができるかもしれない。

 …という期待はしない方が良い。そりゃそうだ。1Dの映画をスパーロックの演出目当てで観る人など、世界中で10人ぐらいだろう。数秒出てくるだけのマーティン・スコセッシやクリス・ロック、クリスティアーノ・ロナウドを目的に観る人もいない。ターゲットは1Dファンの女の子。それも大半が十代だろう。彼女たちがアイドルである1Dに求めるものを提供することこそ、第一使命。間違っても楽屋で下ネタを言い合ったり、「最前列に俺好みの子がいたぜ」なんて軽いセリフを口にしたりするようなところを映してはいけない。絶対言ってるけど。男だし。若いし。

 そんなわけで『ワン・ダイレクション/THIS IS US』には極めて健全なアイドル世界が広がっている。五人のメンバーのハンサムな素顔。優しい性格。その一方でやんちゃなところ。親思いなところ。音楽には真面目なところ。ふざけて仕事が進まなかったりスタッフを困らせたりしても、万事OK、むしろ可愛いとファンは感激するはずだ。あぁ、私の1Dの全てがここにあるわ!ってなもんだ。

 1Dで感心するのは、メンバー全員が少年らしさを失っていないところだ。海外のアイドルグループはどういうわけだか、オッサン臭が強くて、若々しさを残したアイドルは一人いれば良い方。長年の謎だ。バックストリート・ボーイズならニック・カーター、イン・シンクならジャスティン・ティンバーレイク、テイク・ザットならマーク・オーウェン。でも1Dは全員がカーターでありティンバーレイクでありオーウェンのポジションだ。眺めが良い。

 92分という短い上映時間の中だけでも、メンバーの描き分けができている。キャラクターが既に立っているのだ。惚けた顔のナイル・ホーランは「70億人の弟」のキャッチコピーがぴったり。目が王子様風のゼイン・マリクはナイーヴな性格が滲み出る。丸刈りが最高に似合うリアム・ペインはしっかり者タイプ。いつも茶目っ気たっぷりハリー・スタイルズは画面に登場するだけで空気を自分のものにするカリスマ性の持ち主。いちばん英国の匂いが濃い顔立ちのルイ・トムリンソンはまとう空気が最もオシャレ。

 彼らの人物像を掘り下げるのはお宝映像の数々だ。幼少時の写真。裸のサーヴィスカット。レコーディング風景。コンサート直前の素顔。初出しインタヴュー。デビュー前の姿を知る人々の映像まで出てくる。それも女性。ただし、母親かそれよりも上の年齢のオバチャンたち。まあ、あの人たちが近くにいるのは仕方がないわね。同性の友人や恋人は存在してはいけないのだ。少なくともこの映画の中では。五人の仲良しこよし場面が多いのは、そちら系が好きな人の需要があるのだろうか。喧嘩しているときの方が、きっと面白いのになぁ。少年同士の喧嘩なんて、陰湿にならないだろうしな。

 しかし、冷静に眺めると、メンバーよりも印象に残るのはファンだったりする。どこの国に出かけても、とんでもなく熱狂的。歓声ではなく「あなたたちを一目見られるなら死んでも良いわ!」という絶叫。どのファンも声の限りに叫んで、顔がとんでもないことになっている。歪み方がスゲー。顎が外れていませんか。

 楽曲の魅力を伝える場面がほとんどないのは仕方がないのか。真剣に音楽と向き合う姿があっても良かったのではないか。参加することに意義がある的な部活動のノリが若干漂ったのは、何か違う気がする。

 ちなみに…1Dに初めて興味を抱いたのは「One Way or Another (Teenage Kicks)」のMUSIC VIDEOを見たときだ。デヴィッド・キャメロン英国首相がメンバーに囲まれているショットが可笑しかったからだ。何が可笑しかったかというとキャメロン首相の困惑の表情だ。「俺は何をやってるんだ」みたいな。自分の息子ぐらいの年の男の子に囲まれたら、そりゃそういう表情になるだろう…というのが正直過ぎて、笑った。

 あ、1Dよ、できる限り少年っぽさを失わず、頑張って下さい。





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