セブン・サイコパス

セブン・サイコパス “Seven Psychopaths”

監督:マーティン・マクドノー

出演:コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウッディ・ハレルソン、
   クリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツ、アビー・コーニッシュ、
   オルガ・キュリレンコ、マイケル・ピット、マイケル・スタルバーグ、
   ガボーレイ・シディベ、ハリー・ディーン・スタントン

評価:★★★★




 傍らにシーズーを遊ばせながら、コリン・ファレルのぶっとい眉毛が、いつにも増して八の字になっている。ファレルが演じる脚本家はスランプ中。七人のサイコパスが出てくることこそ決まっているものの、アイデアはまるで沸いてこない。『セブン・サイコパス』はファレルがサイコたちを捻り出そうとする話。ハリウッドに氾濫中の暴力にはうんざり、愛と平和をテーマにしたいと言ってのけるファレルは、作品を無事完成させることができるだろうか。

 この映画自体が暴力に溢れ、しかしある種の愛と平和を描いているという皮肉はもちろんあるものの、いちばんの見ものはサイコのコレクションだ。それぞれに個性もインパクトもあるサイコの中では、クエーカー教のサイコの物語に聞き入る。サイコたちの話は悲劇性と喜劇性が衝突しているのが特徴で、とりわけクエーカー教サイコのエピソードはそれが色濃い。哀しくて、でもどこか可笑しい。

 サイコたちの話を語ることで、映画に一本の大木が育っていくのが面白い。サイコの多くが別次元に生きていることが重要ポイントだ。あるサイコは現実の存在。またあるサイコは過去の人物だ。別のサイコは空想の中に生きていて、その隣のサイコは文字の上で踊り、反対側の隣のサイコは仮面を被っている。時空や場所、妄想や文字の中を飛び越えてサイコが集まり、ゆえにそれを養分とする大木は、非常に重層的だ。気がつけば話の真ん中に愛らしいシーズーがいるのが可笑しい。

 ファレルの友人がシーズーを誘拐したことで、マフィアを巻き込んでの騒動が発展していく。このすっ呆け方のくすぐりが最高だ。大の大人たちが血まで流しているのに、自分たちの滑稽さに気づかないまま七転八倒。脚本家はある意味、八人目のサイコパスだ。こんなバカ話を芸術に仕立て上げるのだから。

 クセモノスターが次々顔を見せるのが嬉しい。ファンキーなサム・ロックウェルや普通にしていても可笑しくて怖いウッディ・ハレルソンも良いけれど、やっぱりクリストファー・ウォーケンがベストだろう。それこそ存在自体が悲劇的で喜劇的。顔面の芸術性もさることながら、口から飛び出す言葉がしみじみと聞かせる。身体の動きも相変わらず綺麗だ。

 面白い画やセリフもてんこ盛りだ。画のベストは砂漠の夜、ファレル、ロックウェル、ウォーケンが語り合うところか。「ヒットマンズ・レクイエム」(08年)を手掛けたマーティン・マクドノー監督らしく、詩情が美しい。ハレルソンがガボーレイ・シディベを脅す画も妙に味があるのだけれど…。セリフならハレルソンがロックウェルに向かって言い放つそれが愉快だ。「ボニー(シーズー)は組の者じゃねえぞ。卑怯だろ」。シーズーの表情もイイ。

 クエンティン・タランティーノ映画をコピーして遊んでいるだけに見えて、かなり知性を感じさせる物語構造。それをひけらかすことのないまま、語ることについて考察する優雅さよ。映画で戯れるとはこういうことを言うのだろう。





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