恋するリベラーチェ

恋するリベラーチェ “Behind the Candelabra”

監督:スティーヴン・ソダーバーグ

出演:マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エイクロイド、
   スコット・バクラ、ロブ・ロウ、トム・パパ、
   ポール・ライザー、デビー・レイノルズ

評価:★★★




 リベラーチェの職業は「ピアニスト」になるのだろうか。しかし、それよりもぴったり来る呼称は「エンターテイナー」だろう。ピアノを演奏するときの、別の生物のように動く指先の魅力もさることながら、ステージの華やかな盛り上げ方は、選ばれた者にしか実現できないオーラに包まれていた。エルヴィス・プレスリーやマドンナ、レディー・ガガらが影響を受けたというのは、全く、納得できる話だ。

 『恋するリベラーチェ』でスティーヴン・ソダーバーグはまず、リベラーチェの外見作りから入る。演じるのは何とびっくり、マイケル・ダグラスだ。どこからどう見ても女好き、いつでもどこでも精力絶倫男のダグラスが、ピカピカ・キラキラ・ゴテゴテの衣装に身を包む。小林幸子も羨ましがるだろう装置風衣装に呑まれないダグラスによるリベラーチェでもっと注目すべきは、顔の弄り方だ。

 若さと美しさに固執したリベラーチェ。場面によって顔が違う。年月が流れてもリベラーチェはケロッと若返る。シワが消え、弛みが消え、リベラーチェは老いと永遠の追いかけっこに興じる。金が物を言う強引なアンチエイジング。ダグラスもお直し好きの俳優で、リベラーチェの整形趣味人生とリンクするのが可笑しい。

 リベラーチェと恋に落ちる青年をマット・デイモンが演じる。最近はマッチョなイメージも持つデイモンが、ダグラスと奏でるラヴシーンの画が強烈。どちらも70年代の匂いをまとい、目回りをべったり塗りたくり、ピンクの口紅を差し、頬を赤くして、ベッドやバスタブで愛を語り合う。朝目覚めたとき、最初に視界に入るのが、あからさまにメイクばっちりのダグラスってどうなんだ。想像して欲しい。思わず呻き声を上げるのが普通の反応だろう。もちろん褒めている。

 ギョッとするのはリベラーチェが青年に整形手術を迫る件だ。自らのみならず、愛する男にも美を求めるリベラーチェ。しかも、自分と同じ顔になるように迫るのだ。ちらつく怪物性。美のルーツ。キリのない自己愛と欲望。そうしてできあがる青年の顔面に、失礼ながら笑いがこみ上げる。ダグラス風デイモンの完成だ。

 多くの偉大なアーティスト同様、孤独をまとう。と言っても、全然暗くならないのが良い。リベラーチェのそれは、明るいのだ。同性愛者であり、子どもがおらず、生涯を共にする人もなかなか見つけられない。ファンからは常に華やかな存在として見られるべきというプロ意識と密着した孤独は、ステージ上だけでなく、プライヴェートでもゴールド・シルヴァーに包まれて、でしゃばろうにもそれができない。孤独の腰が引けているみたいで、可笑しい。

 後半の愛憎劇風の展開はありきたりだけれど、リベラーチェと青年が互いになくてはならない存在だった感じが良く出ている。明るい孤独に徐々に影が差していく。肉体改造も特殊メイクも厭わないダグラスとデイモンの懸命の演技。リベラーチェが若いツバメと暮らしては別れてきた過去が仄めかされる序盤が効いてくる。青年も同じ運命を辿るのだろうか。

 瞼に残るのが、エイズに倒れるリベラーチェでないところが良い。ソダーバーグが描き出すのは、20世紀最大のエンターテイナーの輝く姿だ。ステージの上でも降りてからでもエンターテイナーであり続けた男の虚飾は、人生の豊かさに繋がっていた。不幸な男ではない。幸せな男だ。正しい解釈だろう。





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