42 世界を変えた男

42 世界を変えた男 “42”

監督:ブライアン・ヘルゲランド

出演:チャドウィック・ボウズマン、ハリソン・フォード、
   ニコール・ベハリー、クリストファー・メローニ、アンドレ・ホランド、
   ルーカス・ブラック、ハミッシュ・リンクレイター、ライアン・メリマン

評価:★★★




 「42」という数字は、メジャーリーグで全球団唯一の永久欠番らしい。かつて42の背番号をつけていた選手こそ、『42 世界を変えた男』の主人公ジャッキー・ロビンソンだ。ロビンソンはメジャーリーグに初めて現れた黒人選手。毎年4月15日はメジャーリーグの全球団・全選手が「42」をつけてロビンソンの偉業を讃える。立派な人物の匂いが立ち込める。

 ロビンソン賛歌に終わる危険を秘めた題材だけれど、それでも差別問題を抜きにして彼を語ることはできない。戦後の野球界(に限らないだろうけれど)はまだ、ニガーやニグロという言葉が飛び交い、白人の多くが平気で黒人を差別していた。ロビンソンも心ない仕打ちを次々受ける。敵チームからの侮蔑の言葉。観客席からの野次。大量に届く脅迫文。宿泊先への襲撃。チームメイトすら彼を受け入れず、心が休まるのは愛する妻といるときだけ。いや、妻といても気を抜けば、傍らの差別の火薬に火がつけられる。その陰湿な実態を描く。

 ロビンソンはそれに屈しない。と言っても、彼は何もしない。肉体的に反撃すれば、白人社会におけるスポーツ人生はその時点で終わる。言い返すことさえ危険極まりない。彼にできるのは沈黙すること。耐えること。そして、プレイにより自分という存在を証明すること。ここが面白いところであり、同時にフラストレーションが溜まるところだ。ロビンソンの代わりに言い返したい。可能ならば、殴ってやりたい。そう思わせるエピソードが並べられ、そのダムの汚水が決壊寸前となったところから、カタルシスを得られる「変化」が語られる。

 変化はやはり、チームメイトから始まる。プレイ中ずっと暴言を吐く敵チームの監督に抗議。ブーイングに包まれた球場でロビンソンと肩を組む。いつも最後に使っていたシャワーを一緒に浴びるように誘う。野球というスポーツが育て上げる健全性。仲間のいる意義。善良なる心の勝利。言わば、アメリカが、アメリカ映画が愛してきた価値観が浮上する。そういう意味でこの映画、新しいものなどどこにも見当たらないものの、安定した満足感は得られる。ロビンソンが打ちのめされたところで終わることなど、あり得ないのだから。

 ただし、重大なる欠点が存在する。野球のプレイそのものの魅力には乏しい。あくまでメインは、偉大なる人物の人種差別との戦いであり、一流のプレイではない。ロビンソンがプレイにより成し遂げた偉業はダイジェスト調に見せられるだけで、ナショナルリーグMVPやら新人王やら首位打者、盗塁王といったタイトルに結びつくような身体能力を見せる場面は僅かに留まる。…となると、別にロビンソンでなくても、野球界を舞台にしなくても、他のアフリカ系偉人を主人公にしても成立する話なのではないかという気配がちらつく。

 それから、もっとグレイゾーンを表現するキャラクターが欲しい。ロビンソンが選手として一流だから、人間的に優れているから…という理由だけによる差別意識の変化は、単純化された美談を見せられているようで、落ち着かない気分。でもまあ、快感を狙った映画だから、これで良いのかもしれない。

 ロビンソンを演じるチャドウィック・ボウズマンはきびきびした動作と力のある目が印象的。もっと華麗なるプレイシーンを観たかった。儲け役だったのはGMを演じるハリソン・フォード。ジェフ・ブリッジスを参考にしたようなゆったりと大きな演技で、ヨーダがルーク・スカイウォーカーにしたようにボウズマンを導く感じが良く出ている。





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