黒いスーツを着た男

黒いスーツを着た男 “Trois mondes”

監督:カトリーヌ・コルシニ

出演:ラファエル・ペルソナーズ、クロティルド・エスム、アルタ・ドブロシ、
   レダ・カテブ、アルバン・オマル、アデル・エネル、
   ジャン=ピエール・マロ、ローラン・カペリュート、ラシャ・ブコヴィッチ

評価:★★




 ラファエル・ペルソナーズはフランスで「アラン・ドロンの再来」と言われているらしい。なるほど、それはひょっとして『黒いスーツを着た男』の役柄によるところが大きいのではないか。ペルソナーズが演じるのは、元貧乏人の車のセールスマンだ。社長の娘との結婚も昇進も決まっている。その彼が深夜、轢き逃げ事故を起こすも逃走、窮地に陥る物語。ドロンが「太陽がいっぱい」(60年)で演じたトム・リプリー役を思わせるところが多いのだ。ただし、ペルソナーズの役柄に厚みはない。

 そもそもがバカバカしい話だ。交通事故の加害者となるセールスマン、事故の目撃者、被害者の妻をメインに置いた物語は不自然さに満ちている。セールスマンは身を守りたいと思いながら、自分が犯人だと認めるかのような怪しい行動を隠さない。目撃者の女はどういうわけだか、自ら進んで加害者と被害者の仲介役になる。被害者の妻は不審に感じるところがあっても、決定的な出来事が起こるまでその追求を避ける。

 どう考えてもサスペンス満載のフィルムノワール調の話なのに、彼らは全員善人という設定で、スリラーではなく人間ドラマとして見せたいようなのだ。コメディにする方がまだ納得できる。これだからおフランスは…。いや、だからこそおフランスか…。でもちょっとアンタ、加害者と目撃者が、共犯関係でもないのに、男女の仲になるって一体…。メロドラマに転がって、どうしようというのか。

 画面をざわつかせるのはメイン三人の周辺人物たちだ。加害者の同僚たちの友情を盾にする胡散臭さ。ガマガエル風の義理の父の権力志向。婚約者の利己的言動。被害者の仲間たちのチンピラ的立ち居振る舞い。彼らが動いて初めて、メインどころが動き出す。尻が重い。

 加害者役に厚みが感じられないのは多分、生への欲求、幸せへの欲求が薄いからなのだろう。どんなことがあっても生き延びてやる、幸せにしがみついてやる…という迫力に乏しい。生命力が感じられないと言い換えても良い。そしてそれは、たったひとつの過ちが人生を台無しにしてしまう物語の燃料になるはずだったものだ。

 被害者の妻が夫の臓器の提供を求められる場面は面白い。モルドヴァからの不法滞在者である彼女は、夫と共に極めて苦しい暮らしを強いられてきた。手を差し伸べてくれる機関はない。それにも関わらず病院は、不幸のどん底の最中、臓器をくれと言う。その悔しさ、怒り、哀しみ…。アルタ・ドブロシの演技も凄味がある。

 邦題は『黒いスーツを着た男』とあるけれど、黒よりも青のイメージが強く残る映画だ。ネクタイ、ペン、タイル、シャツ、公衆電話、カーテン、夜明けの空、薄暗い部屋の中…。善悪の境界がぼやけていることを象徴しているのだろうか。





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