ダイアナ

ダイアナ “Diana”

監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル

出演:ナオミ・ワッツ、ナヴィーン・アンドリュース、ダグラス・ホッジ、
   ジェラルディン・ジェームズ、チャールズ・エドワーズ、
   キャス・アンヴァー、ダニエル・ピリー、
   ジュリエット・スティーヴンソン、ジョナサン・ケリガン

評価:★




 ダイアナ妃の、量がたっぷりで剛毛に覆われたヘルメット風の髪型が苦手だ。スズメかツバメぐらいなら飼えると思われる柔らかさの欠如。ナオミ・ワッツがダイアナ妃を演じるにあたりクリアしなければならないのは、この髪型だった。そうして用意されたウィッグはまずまずの出来映えだ。本家ほどの硬さはないものの、そこまで忠実に再現したらフォトジェニックな側面が消失してしまうから仕方ない。実際、髪型を似せただけで、雰囲気はダイアナ妃風になったワッツである。

 けれど、それだけだ。ダイアナ妃とワッツの決定的な差はもちろん、身長にある。ダイアナ妃は大きかったのだ。骨の太さと大胆不敵さの相乗効果により、身長以上に大きく(野太く)見えたのがダイアナ妃だ。それに較べるとワッツは、線の細さがどうしても消えず、どれだけ頑張っても再現ドラマで見かけるそっくりさんにしかならなのが不幸だ。

 いや、ワッツは悪くはないのだ。喋り方はかなり研究しているし、肩を揺らして「私を見て」という空気を無意識に発する歩き方も似せている。公の場に出てきたときの表情の作り方も悪くない。いちばん感心したのはBBCのインタヴューに応える場面。シベリアンハスキーを思わせる真っ青な目の、うつむき上目遣い。ダイアナ妃特有の恨みがましい眼差しに、座布団一枚。

 『ダイアナ』で最も難しいのは作り手の立ち位置だ。ダイアナ妃の生き方を好意的に見るのか否定的に見るのか。あくまで中立だと白を切るのか。その点は潔いと言うか何も考えていないと言うか、ダイアナ妃に対して極めて同情的な描き方が選ばれている。そりゃそうかもしれない。未だに根強い人気を誇るダイアナ妃、辛辣な視線を向けようものなら、方々からブーイングを受けるだろう。しかし、それが映画の陳腐さを呼んでしまうとは、あぁ、残念無念。

 何しろここに描かれるダイアナ妃は、傷ついた小鳥という言葉すらバカに聞こえるほどに、心優しき悲劇の天使だ。チャールズ皇太子の裏切りにより精神的に打ちのめされ、孤独に苛まれ、けれどそれにめげることなく慈善活動に積極的に参加。その最中に出会ったパキスタン医師と恋に落ち、しかしマスコミの過剰な報道をきっかけに関係が終わってしまう。ダイアナ妃は美しい人だった。心優しき人だった。ささやかな恋もした。あぁ、でも運命は彼女に味方をしなかった。その悲劇性を過剰に飾り立てる。

 メロドラマもびっくりの後先考えない安っぽい恋模様の合間に、サブリミナルのようにダイアナ妃の慈善活動が挟まれるのに閉口する。地雷撤去を中心に世界各国を飛び回って平和を訴えるダイアナ妃の姿の胡散臭いこと。何しろ彼女はこんなセリフを言うのだ。「私は人のためになりたいのよ」。「病院って何か手伝える気がしてワクワクするわ」。さらにはこんな風にも言われる。「あなたは愛を与え過ぎて、受けるのは下手なのよ」。これが作り手の考える、ダイアナ妃の本質らしい。ここでの慈善活動描写は、その表現に過ぎない。

 恋に破れたり、死を招いたり、マスコミとの確執も度々描かれる。この点において、彼女は単純な犠牲者ではない。ダイアナ妃という人は、マスコミを利用するしたたかさも持っていた。だからBBCの独占インタビューもあったしエジプトの富豪との関係をわざと撮らせたりもした。それにも関わらず、彼女の態度も作り手の視線も、自分は(彼女は)過剰報道の犠牲者だという安い見方に異論を唱えない。

 繰り返す。作り手はダイアナ妃を好意的に見ている。それにも関わらず、ダイアナシンパからの支持は得られないだろう。なぜなら、そうした腫れ物に触るようなダイアナ妃の描き方がかえって彼女を、衝動的で浅はかな可哀想な人としか見せないからだ。ここに映し出されるダイアナ妃を魅力的に思う人は、まずいないはずだ。部屋の内装の趣味の悪さや恋に浮かれたときの暴走もさることながら(鏡に口紅でキスマークとハートマークって…)、パーソナリティが一面的なのが問題だ。

 関係ないけれど、ダイアナ妃周辺は興味深い人が少ない。例外はハリー王子か。あの隙の多さは憎めない。ダイアナ妃がハリー王子をどう育てたのか、そちらの方が楽しかったりして…。





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