クロニクル

クロニクル “Chronicle”

監督:ジョシュ・トランク

出演:デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン、
   マイケル・ケリー、アシュレイ・ヒンショウ

評価:★★★




 偉大なる力を持ったヒーローは思い悩むのが常だ。何のために力を持っているのか。俺はそれに見合った人間なのか。これからどこに向かうべきなのか。スーパーマンやスパイダーマンでさえ苦しむのに、一般人の、それも十代の少年ならばなおさらだ。『クロニクル』ではひょろひょろの少年が、思いがけず超能力を手にしてしまう。さて、彼はどう使うか。

 少年像が容赦ない。父親は飲んだくれで暴力を振るう。母親は優しいが病気で寝たきりだ。家は貧乏を極め、母親の薬すら調達できない。学校では空気のように扱われ、たまに目に留められれば雑魚扱い。驚いたのは、彼が泣いてしまうところだ。歯を食い縛って過酷な運命に立ち向かうのではなく、もはや人生を諦めているかのよう。ビデオカメラを回して日々を記録することだけで、自分を確かめられる。何とも嫌なリアリスティックな空気が毛穴に沁み込む。

 リアリスティックと言えば、少年が力を手にしてからの展開にも当てはまる。手にした悦びで遊びに耽り、いたずらに興じ、人気者を目指し、しかし孤独に苛まれ、そして遂には周りを巻き込んでの大爆発に突入する。人生の中で最も多感な時期。力に向き合うことなど到底できず、それに踊らされていく感じが、青春の残酷さの中に焼きつけられていく。見ものはもちろん、暴走を始めてからの描写だ。「キャリー」(76年)もびっくりの、とんだ地獄絵図が広がる。

 地獄絵図に、ある種のカタルシスがあるのが怖ろしい。少年が長年に渡って抱え込んできたことを思うと、ある面では納得できてしまうのだ。暴走により生きる苦しさが弾け飛び、大気中に広がっていくような…。そこには切なさが入り混じる。少年の暴走は全く褒められたものではないけれど、その哀しみが青春と密着し、決して他人事ではない後味を残していく。誰よりも強力な力を獲得した少年は、誰よりも脆く弱かった。こんな寂しいことはないだろう。ビデオカメラによる粗いアクション映像が、大金をかけたCGによるそれよりも生々しい空気を放つ。

 少年をデイン・デハーンが演じるのが効いている。孤独な目に次第に狂気が宿っていく感じが良く出ている。見るからにひ弱そうで、けれど身体の芯に鋭いナイフが通っていることを感じさせる。人間ニトログリセリンのような危うさに包まれている。暴走した際の「身近な狂気」が凄まじい。ネット上に上がっていてもおかしくないような平凡な風景に潜む狂気の佇まいに凄味がある。

 デハーンのポイントはクマがたっぷり浮かんだ目周りだけではない。目尻と同じように口角に放射線状のシワができるのが面白く、何より眉間に入る縦ジワに迫力がある。縦ジワはおでこにまで突入する。顎が割れている俳優は多いけれど、額が割れているのだ。前髪を降ろして隠しているけれど、ハゲに襲われているのではないかと勘繰りたくなる広い額で、狂気の源はここから放出されているのではないかと思うほど。物言う額だ。

 少年の言動はカメラにより記録される。記録された内容に大きな意味はない。それは日々を不安で支配され、自己の確立がままならない少年のあがきだ。彼の分身はアメリカにも日本にもうようよいる。能力を持たない救われぬ魂はどこに向かえば良いのだろう。これはやはり、優れた青春ドラマとして観るべき映画だ。





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